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世界一初恋 高x律 大切な気持ち

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【SIDE 律】

一面真っ白な空間
気付いたらそこに座っていた

座ったまま両手を後ろに付き、上を見上げる
廻りを見渡しても何もない。
目に映るのは果てしなく続く真っ白な世界
何もない・・・俺以外何もない世界

「どこだろう・・ここ」
ポツリと呟いた言葉は、響くことなく耳に戻ってくる

確か・・・と直前の記憶を辿ってみる
印刷所からの帰り、猫がいて、トラックが突っ込んできて・・・・
あー俺、飛び出して跳ねられたんだっけ?

そう思い出し、自分の身体をペタペタ触ってみる
顔もペタペタと触るが、痛いところは無い

ゆっくりと立ちあがり、両足を動かす
ここに居ても仕方が無いので、一歩ずつ前に進む
どこに行けばいいのか分からないが、ジッとしているより前に進みたいと思った

歩いていても進んでいるのかすら分からない
ずっと同じ景色・・・というより白い空間
足は動かしているが、前に進んでいないのかもしれない
その場で足踏みをしている状態と同じ感覚だった

「どこだろう・・」
もう一度声に出して言ってみる
だけども自分の言葉に対しての返事はない

急に不安と恐怖が襲ってきた
カタカタと震えだし、その場に座り込む
肩を自分の両腕で包むように抱きしめながら、震えが収まるのを待つ

誰もいない
一人だけの空間

「先輩・・・嵯峨先輩・・・」
熱にうなされたように名前を呼び続ける
涙が頬を伝わりポトリと床に落ちる

どのぐらい泣いていたか分からない
ジッと動かず、座っていた時、背後に気配を感じた
一瞬ビクッとしたが、恐る恐る振り返る
そこには少し大人びた利津の姿があった

「利津?」
利津はゆっくりと近づきながら優しい表情で律を見ている
もう一度利津の名を呼ぶと、コクリと頷き律を背後から抱きしめた

『泣かないで律』
「利津・・・俺・・・」
利津の両腕にそっと手を添えた

『ここ、どこだかわかる?』
利津の問いにフルフルと頭を振り「わからない」と答える
『ここは律の心の中』
「・・俺の?」
『そう。』
「真っ白だよ」
『うん。真っ白だね。でも律がそれを望んだんでしょ?』
「・・・・・」
『律が望んだからこの空間は真っ白なんだよ』
「でも・・・なんで利津がいるの?利津は・・・」
『律が俺を呼んだから。俺は律の記憶にある俺なんだよ』
「・・・先輩は?俺さっき嵯峨先輩を呼んだのに・・・」
『彼はこの空間に入ってこれないよ。律はすべてを忘れるって望んだから』
「・・・・っ!」
『だから俺が代わりに来た。いつまでも泣いてる律が可哀そうだから』
「俺・・・どうしたの?」
『今病院のベットの上だよ』
「病院?」
『そう。事故にあって、その後搬送されて、側にお父さんが座ってるよ』
「そっか・・・俺助かったんだ」
『うん。だけど、律が心を閉ざしてしまったから皆悲しんでる』
「・・心を閉ざす?」
『この空間。何も無いでしょ?これは律が心を閉ざしてしまったから何も映し出さない』
「・・・・・」
『どうして忘れたいと思ったの?大切な記憶なのに』
「・・・だって・・俺は・・・昔の俺は・・先輩を傷つけて・・今の俺は高野さんを傷つけて・・・」
『うん』
「出会わなければ良かったって思ったんだ。そうすれば傷つけることなんてなかったのに・・」
『律、それはエゴだよ。彼はそんなことを望んでいない』
「・・・・っ!」
『彼は律との出会いを大切にしてるし、今も昔以上に律を大事に思ってるよ』
「だけど・・・俺は高野さんを受け入れることは出来ない。知ってしまったから。あの人の弱さを」
『また傷つけるかもしれないって思ってるの?』
「・・・・・」
『律はいつも前を向いて輝いてた。どんなに苦しくても哀しくても前を向いて歩いてた
 俺はそんな律が羨ましかった
 だから俺は死という運命にも逆らわず、精一杯前を向いて最後の瞬間まで笑っていたいと思った』
「利津・・・」
『だけど今の律は俺の知ってる律じゃない
 ウジウジ後ろ向きで、昔の俺みたいだ』
「・・・ごめん」
『過去は過去って言ったのは誰だ?律が彼に言ったんだろ?
 この先どんな運命が待ってるかなんて分からないけど、律は彼とどうしたいの?』
「俺は・・」
『素直になりなよ。律。彼ならすべてを受け入れてくれるよ』
「俺は・・一緒にいたい。高野さんと一緒にいたいと思ってる」
『答えが出たなら、皆のところに戻ろう?』
「利津は?」
『俺はいつでも律と一緒に居る。』
「また逢える?」
『律がピンチになったら逢いに来てあげる。でも多分・・・今度は彼が来てくれると思うよ』
「?」
『ほら・・・呼んでる・・彼が呼んでるよ』
「え?何?」
『目を閉じて、耳を澄まして律。彼の声を聞いて』

俺は利津の言う通り目を閉じ耳を澄まし、白い空間にかすかに聞こえる声に集中したところで・・
意識が戻った