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世界一初恋 高x律 大切な気持ち

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【SIDE 高野】

--- どーりで小野寺と『織田リツ』が重なる訳か

居酒屋の前で小野寺と別れた後
自宅に帰った俺は鞄を放り投げ、ドシッとソファーに座り天井を見上げる
親戚同士で兄弟のように育ったのなら、趣味や仕草が似ていることも納得できる

ずっと逢いたいと心の底から思っていた
だけど、あいつはもういない
俺の気持ちを伝えることが出来ない

鈍器で殴られたかのように頭が痛い
心臓を鷲掴みにされている感じだ

「・・・・っ!リツ」

静かなリビングに俺の言葉だけが響き渡る
何度呼んでも、あいつは振り返る事は無い

俺の頬には一筋の涙が零れた



『織田リツ』の件を小野寺に話した後から態度が変わった
仕事以外ではなるべく関わらないようにしているのが分かる

昼食だったり、飲み会だったり
俺が来ると知ると、「都合が悪くなりました」とあからさまに避ける

別段仕事には影響しておらず、特に問題視することでもないのだが

--- 気に入らない

俺は昔から他人と一定の距離を保ち、なるべく関心を持たず、深く関わらないようにしている

職場でも、エメ編メンバーは良い奴らばかりだが、
必要以上には関わらないようにしていた

それでも、小野寺がエメ編に来てからというもの
皆があいつを構い倒し、以前よりもメンバー間の交流が深くなったと思う

自然と、笑顔になることが増えた

たった一人の存在だけで、周囲が良い方向に感化されていく
小野寺は起爆剤のような人物だった



遡ること数週間前、『織田リツ』のことを知った俺は、翌日小野寺を誘って居酒屋に来ていた
何でもいい。少しでもあいつのことを知りたかったからだ

「何で高野さんは”利津”のこと知ってるんですか?」
小野寺にしてみれば当然の質問だろう
俺は昔の話しをした

「当時、俺が高校三年の頃に付き合ってたんだよ」
へ?と間抜けな顔で俺を見るから、クスッと笑った
そうだよな。男同士で付き合うなんてお前には考えられないだろう?

「リツが俺に告白してきてさ。付き合い始めた。
 だけど、突然俺の前から消息不明になった」
淡々と話しを進めた

「探したんだけどさ。その頃両親が離婚してさ。
 俺、四国へ引っ越すことになったんだよ。だからそれ以来逢ってない」

「・・・・・」

「お前あいつから聞いたことない?『嵯峨政宗』って名前」

「・・・・・っ!」
その表情は驚きと困惑が混在し、小野寺の顔色は見る見るうちに青白くなった

「聞いたことある?」

「・・・・・はい。一応それっぽい名前は聞いたことあります」
ちゃんと聞いてなければ聞きとれないほどの小さな声で、小野寺は答えた

「そっか」

その日以来、あいつは俺を避けるようになったんだ