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世界一初恋 高x律 大切な気持ち

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【SIDE 高野】

--- イライラする

今日も小野寺は文芸部署の奴と楽しそうに話している
以前の職場で担当だった角遼一先生の【瓶の蓋】を大事そうに抱えながら
俺には見せない笑顔で話しこんでいる

それだけじゃない
隣の席に座る木佐とじゃれあっていることもある

--- 近い!近すぎる!!

無意識のうちに小野寺へ視線が向いてしまう
この感情は何だ?

気になる。あいつの全てが気になる
心がざわつく。息が苦しい。心臓の音がうるさい

なに・・・これ・・・

懐かしいような、思い出すと切なくなる感情
忘れようとして捨てられなかった気持

--- 恋心・・・『初恋』



この気持は本物なのだろうか?
俺は『織田リツ』と小野寺を重ねているだけではないだろうか?

どことなく似ている二人
些細なことでも全て俺のモノにしたいと思う独占欲

『織田リツ』とい人物が既に存在しないと知った途端に
俺は証拠にも無く幻影を追っているだけなのか?

--- わからない

ただ気付いたことがある
俺は『織田リツ』よりも小野寺のことばかり考えていて
あれだけ忘れなかった『織田リツ』を忘れているという事実



ちょこまかと逃げ回る小野寺を捕まえて、会議室へ連れ込む
あいつは不貞腐れたような表情で俺を睨む

「あのさ。なんで避けんの?」

「べ・・別に避けてなんていません!仕事だってちゃんとやってます!
 何か問題でもありますか?!」

「俺が何かした?」

「人の話し聞いてます?避けてないっていってるでしょ!」

「どーして俺の顔見ないの?」
グイッと顎を掴み小野寺の顔を持ちあげる
見上げたこいつの表情に一瞬ドキッとしてしまった
頬を上気させ、真っ赤な顔で大きなエメラルドの瞳は潤んでいる

--- 俺はこの表情を知ってる・・・

直感というよりも本能でそう感じた

そのまま唇を奪い、何度も角度を変えキスを交わしながら舌を絡める
歯列をなぞると小野寺の身体がビクッと震え力が抜けていくのがわかる

--- 身体が覚えている・・・

流石に苦しくなったのか、小野寺が胸を叩き解放を迫る
あいつは「ぷはっ」と新鮮な空気を吸った後、思いっきり平手打ちされた

「・・・っ!」

「セ・・セクハラです!俺にはそんな趣味ありませんから!」

バンッとドアを思いっきり閉めて出て行った

俺は叩かれた頬を触りながら、一人心地だ
何故あいつとキスをしたのか
唇に触れた瞬間、身体に刻まれていた記憶が溢れだした

『先輩・・・嵯峨先輩・・』