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世界一初恋 高x律 大切な気持ち

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【SIDE 律】

--- いきなり唇を奪われた

俺に大人のキスを教えてくれたのは嵯峨先輩だった
懐かしくてつい身を預けてしまったけど、我に返って高野さんを殴ってしまった

--- 俺、何やってんだろう

自己嫌悪に陥りトボトボと自宅マンションへ帰る
高野さんのことが頭の中でグルグル回ってて身体が熱くなる
どんなに忘れようとしても、忘れられない。俺の『初恋』

--- 初恋なんて、叶わないモノ

貸出カードに偽名を使った時点で先輩を裏切ってたわけで
その上、知らないとは言え利津のことを話して勘違いした高野さんを傷つけて
本当、何やってんだろう・・俺



悶々と考えたけど、高野さんと俺は職場が一緒で、上司と部下でもあるから
ちゃんと仕事はしないと社会人としてダメだし
だから昨日のことは忘れよう・・・そう思ってたのに、高野さんに掘り返された

昨日の件を謝る高野さんに「俺も忘れますから」と、もうこれ以上思い出させないでほしい
それなのに、「時間空けろ」って・・・何の拷問ですか?

上司命令が発動したから渋々付き合うことになったけど・・
何故部屋呑み?

「『織田リツ』絡みの話しだから。二人っきりで話したい」

・・・そんなこと言われたら、俺断れないじゃないか。
この人は知らないけど、俺だって正直辛いんだよ
過去の俺のことを高野さんが語る時の表情は淋しそうに笑うんだ
目を細め、遠くを見て、俺を通して昔の『織田リツ』をみている

そんな表情の人を放っておけるほど、俺だって鬼じゃない

嫌いで別れた訳じゃない。だから辛いんだ
お互いこんなに近くにいるのに、もう伝えられない言葉。

そんなことを考えながら電車に乗っていると「降りるぞ」と声を掛けてきた
駅名をみると・・・え?ここって・・・俺も最寄駅ここなんですけど?

腕を引っ張られ駅前のコンビニに寄った
あのぉー俺ここで夕飯調達してるんですけど?

まさかな・・・そんな偶然があってたまるか!
そもそも一度別れた先輩と再会したこと自体が奇跡に近いのに・・・

「げっ!」
高野さんが階数ボタンを押した時、つい声が出てしまった
「何?」
「・・・い・・いいえ。き・・気にしないでください」
ヤバイ・・・心臓がドキドキしている・・・

12階に着いて、高野さんが玄関の鍵を開けようとしていた
部屋番号 1201号室
俺の部屋 1202号室
隣人でしたって漫画の世界か!なんだよこの展開!
俺は盛大に溜め息を付くと、高野さんは怪訝そうに見て「だから何?」と聞いてくる
「何でもありません!」そう、気付かれなけれないいだけだ
今までだって顔すら合わせてないんだ。俺が挙動不審にならなければ大丈夫な・・ハズ?



部屋の作りは同じなのに、高野さんの部屋は綺麗に掃除されていて
俺の部屋とは段違いだった

--- 几帳面なんだ

俺は正坐したまま高野さんからビールを受け取り「お疲れさん」と乾杯した