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世界一初恋 高x律 大切な気持ち

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【SIDE 律】

ポツリポツリと高野さんが話しだす
「俺さ、お前と『織田リツ』を重ねてるのかな
 正直、自分でも分かんねぇーんだけど、お前を見てるとドキドキすんだよ」

ドキッ!と鼓動が跳ねた

「この気持ってなんだろーな
 『好き』って感情じゃねぇーの?」

「・・・高野さんは”リツ”と俺を重ねてるだけで、俺を好きなわけじゃないですよ」

高野さん、あなたは過去に囚われたままなんですよ。俺と同じように・・・
昔の俺を好きなだけで、今の俺を見ている訳ではないんですよ

「リツがこの世にいないって知った時、血の気が引いた。
 多分、心臓止まったと思う。それぐらいショックだった。
 もう一度逢いたかったよ。」

苦笑いしながら、泣くのをグッっと我慢しているような表情だった
若干肩が震えてるように見えるのは気のせいだろうか?

職場では冷静で自分にも他人にも厳しくて・・・そんな人が取り乱したぐらいだ
「・・・高野さんは”リツ”のこと、本当に好きだったんですね」
「うん。大好きだった」

”だった”過去形。
高野さんが”リツ”だと思ってる人は”利津”で、既に他界してるから。

「でも、今はお前のことが『好き』みたい。
 だから分かんねぇーんだよ。俺『織田リツ』を好きだったのかって・・・」

はぁ?
俺を『好き』だという言葉は置いといて
何を今更”好きだったか分からない”って何だよ。

「どんな恋愛してもあいつのこと忘れられなかったのに、
 あいつが”もういない”って知ったら、今度はお前のこと好きになってさ」

高野さん・・・自分のことを責めてるの?

俺達どこで間違えた?
10年前の出会いから間違えだった?
俺が先輩に告白しなければ、この人は苦しい想いをしなくてすんだ?
それとも、再会した時に俺が高野さん=嵯峨先輩って気付いていれば良かった?
直ぐに訂正して『織田リツ』は俺ですって伝えれば良かったのか?

--- 分からない

それでも高野さんには過去の俺に囚われず、新しい未来へ歩き出してほしいと思う

恋をしていた気持は大切だけど、俺達には未来がある
そんなに自分を責めないで下さい



「俺がお前を『好き』になってもいーの?」

何?この人・・・
さっきまで落ち込んでたクセに、俺のこと『好き』になってもいいかって?
ダメに決まってるでしょ!
俺はケジメとしてもうあなたを好きになんてならない!って決めたんだ

って言うか、本当に高野さんって嵯峨先輩と同一人物なのかな・・・
昔は寡黙でクールだったのに・・・

ハァー何だか疲れた
俺は荷物を纏めてそそくさと部屋を出て・・すぐさま自室の鍵を開けて玄関に滑り込む

もう・・勘弁してほしい



翌朝、いつもの時間通りに玄関を開けると、そこには隣人の姿が・・・
「おはよう」
普通に挨拶され、俺は思考が追いつかない
だって今までこの時間で顔を合わすことなんて無かったのに・・・

「なんだよ。上司に挨拶もなしか?」
何故あなたは涼しい顔で冷静に挨拶なんてしてるんですか?

「・・・おはようございます」
俺、この間更新したばかりなのに・・・
真剣に引越し考えた方がいいかも

結局一緒に出社することになった俺達は満員電車で密着した状態だった
耳元で話す高野さんの声に一々反応して身体が熱くなる

「これからは一緒に出社できるな」
それは断る!断固として断る!!
大体、職場も一緒で隣人で元恋人(高野さんは知らないけど)だなんて
どんだけ神様は意地悪なんだ?

「これからは遠慮なしでお前のこと口説くから」
高野さんは悪戯が成功したような笑みを浮かべて俺を見る

はぁ?
俺、頭痛いんで休んで良いですか?