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神手物語(ゴッドハンドストーリー)~名医の条件~10-18話

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第13話 つぎはぎの命


「このバカぁぁぁっ!」
 アリサのビンタがなのはの頬を打つ、しかも思い切り。
「一体どれだけ心配してると思ってんのよっ!
せっかく助けたのに死のうだなんて思い上がるのもいいとこだわ!
え、あんただけが辛い思いをしてる訳じゃあないわよっ!
ユーノなんかあんたの為に命まで捨てようとしたのよっ!
どれだけ周りの人間に迷惑かければ気が済むのよ!」
 怒っていたアリサの声がだんだんと小さくなって涙声に変わっていく。
「なのはちゃん、キレたらあかんで2年前私も経験したことやもの凄く恥ずかしくてもの凄く嫌かもしれん、
でもな、それを乗り越えんと治る物も治らんのよ、ちょっと見とってな」
 はやては車椅子から立ち上がると覚束ない足取りでドアへ向かって歩き出す。
ドアまで行くとまた車椅子へ戻ろうと足を進める。
だが後少しという所で足から崩れて転びそうになる。
それをシャマルが受け止めた。
「2年や、2年掛かってようやくこれだけや、私かてシグナムやシャマルに迷惑かけっぱなしや!でもな今年中に歩ける様になってみせる、今年中に走れる様になってみせる!なのはちゃんはまだほんの2ヶ月や、目ぇ覚ましてまだやっと半月や、その程度のことで腐ったらあかん、諦めたらあかんのや」
 はやては、強い眼差しでまっすぐになのはの目を見つめる。
「なのは……死んだらダメだよ……だめなんだよ……」
 フェイトが消えそうな声で泣きながら訴える。
「なのはちゃん、なのはちゃんが死んだら悲しむ人が大勢居るの、
もう誰も悲しませないんでしょ?その為に強くなるんでしょ?だからそんな悲しいこと言わないで」
 すずかが潤んだ目でそう声をかけてくれた。
 なのはは呆然としていた。
どうして自分がそうしたのかさえ判らない自分が嫌だという感情を爆発させてただ誰かに当たりたかっただけなのかも知れない。
自分の苦しみを知っているから気を遣っていてくれたのに、それを独りよがりに感情を爆発させただけっだった。
 もうどう謝って良いか?さえ判らなかった。
 そんななのはをそっと抱きしめたのはシャマルだった。
「本当は怖かったんだよね?誰にも判って貰えなくて誰にも相談出来なくて苦しかったんだよね?本当は誰に相談したらいいかも判らなかったんだよね?」
 シャマルの優しい言葉に、涙があふれ出す。
そこには、天下無敵の白い悪魔とさえ呼ばれた少女は居ない。
11才の等身大の気弱な少女としてのなのはしか居なかった。
 今までなのはがこんな風に人前で涙を見せたり泣いたりする姿は家族でさえ殆ど見たことがなかった。
「ずっとそうやって生きてきたんだよね?だから誰にも相談出来なかったんだよね?」
 優しい言葉をかけられて優しく抱きしめられてなのははシャマルの胸で泣いた。
そんななのはを優しく撫でながらシャマルは語る。
「なのはちゃん、なのはちゃんの命はなのはちゃん一人の物じゃないの、ここにいるみんなのいえ、なのはちゃんに少しずつ命を分けてくれた人みんなの物なの」
「命を分けてくれた人?」
「そう、私が駆け付けた時、既に殆ど手遅れだった」
 シャマルは敢えてあの時の映像を出してみせる。
「それでもどうにか応急処置をしてあっちの病院に運んだの、でも向こうの医者はなのはちゃんを見捨てたの、そんな時すずかちゃんがこの病院のことを思い出してくれた。
手術の時にね、なのはちゃんの全身の血液全てを入れ替えるほど血を使ったの、その血を使って安田先生と北見先生が、なのはちゃんの命を繋いでくれた。
ここにいる人だけじゃない、血を分けてくれた人、手術をしてくれた先生達、
誰一人欠けてもなのはちゃんは助からなかったの、だから今のなのはちゃんはつぎはぎの命なの」
「つぎはぎの命?」
「そう血を分けてくれた、命を分けてくれた人のその少しずつの分け前とみんなの思いを先生達が縫い合わせてくれたつぎはぎの命、でもねただの継ぎ接ぎじゃあないのよ、なのはちゃんの努力次第で美しいキルトにだって成れるの、だから死ぬなんて言わないで、諦めたりしないで、辛かったり苦しかったり悩み事があったら相談して、あなたは一人じゃない、一緒に頑張ってくれる仲間がいるの」
「ごめん……なさい……ごめんなさい……うぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁ」
 シャマルの腕の中で思いっきり泣いた、これほど泣いたことがあっただろうか?
それは誰もが始めて見るなのはの姿だった。
そんななのはを優しく抱きしめ頭を撫でるシャマルの手は温かく何よりも優しかった。
「シャマルさんの手はもの凄く温かいの、もの凄く大きくて、もの凄く暖かい、まるであの時助けてくれた女神様みたい」
「女神様?」
「うん、夢の中で出会った女神様、私を助けてくれたんだよ」
「助けてくれた?」
「いろんな夢を見ていたの、一番最初の夢だったの……暗くて、寒くて、冷たい水の中をゆっくりと沈んでいる様な感覚、でも水はなくて、どこまでもゆっくり落ちていくの、その内にだんだん体が縮んで行くの、あ、消えるって思った瞬間大きな温かい手が受け止めてくれたの、大きな女神様が私のことを受け止めてくれたの、でもね、何故か顔がシャマルさんだったの」
 シャマルは驚いた、恐らくあの直接心臓マッサージの瞬間だろう?なのはは見ていたのだ、目ではなく魂で、臨死体験、これがそう言う物だろうか?
「他にもね、いろんな夢を一杯見たんだよ」
「どんな夢を見たの?」
「ベッドの上に寝ている私がいてそれを見下ろしてる私がいるの、見下ろしている方の私は、飛べるし壁だって自由に抜けられるから何処にだって遊びに行けるの、でも、出た先でお父さんとお兄ちゃんが悪い人たちと戦っていたの、そうしたら途中から悪い人たちは逃げ出したの、でも、二人とも絶対に許さなくて見逃さなくて「やめて」って叫んでも聞いてくれなくてみんな斬り殺しちゃったの、あの中にも助けて、許してって叫んでる人は一杯居たのに……」
「なのはちゃんそれ幽体離脱や、私も2年前の発作の時経験したあれや」
 はやてにも経験があった、それは忘れもしないあの時の状況とほぼ同じ、死にかかった者にしか判らないあの経験、それを体験した人はかなり多いのだという。
 士郎は更に驚いていた、一部始終を見られていた。
自分の娘がその魂が全てを見ていたのだ。
自分や恭也が鬼と化して管理局の連中をことごとく切り刻んだあの出来事を。
娘には絶対見せられないその惨劇を全て見られてしまっていた。
(もう二度と口を利いて貰えないかも)
 レイジングハートさえ真っ二つに斬ってしまった士郎、
加えてあのことまで知られてしまっては口さえ利いて貰えないだろうと思った。
でも、そうしてでも生きていて欲しいからこそ敢えて自分は鬼になったのだ。
鬼になってでも、どんなに憎まれてもそれでも守ると誓った、それが士郎の愛だった。