神手物語(ゴッドハンドストーリー)~名医の条件~10-18話
「その後でね帰ろうとしたら、遠くの方でどこかのおじいさんが大きく膨らみ始めたの、シャボン玉みたいに薄く大きくなって最後に弾けて細かい光の塵になって辺り一面に降り注ぐの、木や草や動物たちもそれを受けるともの凄く元気になるの、魂の力がもっと強くなる感じ、それにね弾ける瞬間おじいさんがもの凄く幸せそうだった」
仏教用語で言う入滅という瞬間がある、成仏するというのはこういう事を言うのかも知れない。
自然に還るとはまさにこの瞬間なのだと思う。
「正しく死んだ人の魂、きっと他の生き物の栄養になって居るんだと思の……
あの悪い魔導師さん達の魂はそんな風には成らなかったから……」
それは、まさに成仏を入滅を見た瞬間だった。
「ぁ、大事なことを忘れていた」
「なあに大事な事って?」(シャマル
「はやてちゃんとフェイトちゃんに伝言を預かったの」
「「伝言?」」
「うん、伝言、お花畑でねリィンさんとアリシアちゃんとリニスさんに会ったんだよ。
いつの間にかお花畑を歩いていて、その中に小川が流れていたの、その向こうに3人とも居たよ」
「それ三途の川や、私も見たことあるで」
「うん、でね、その川を越えようとしたら越えてはいけないってリィンさんに怒られてその時お話ししたの、はやてちゃんに宜しく伝えてって」
なのはは、はやての首に掛かったシュベルトクロイツを指さした。
「その中にね、まだはやてちゃんが聞いていないリィンさんの遺言がいっぱい入っているんだって、
はやてちゃんの魔力がもっと強くなって、今のリィンがもっと成長したら『然るべき時』にその遺言を聞ける様になっているって言ってた、鍵は2代目が持っているからって」
「ありがとな、なのはちゃん、その時を楽しみに待っとるからな」
「なのは……私には何て?」
「アリシアちゃんがね向こうでも楽しくやってます、心配しないでって、アリシアちゃんはいつもリニスさんと一緒なんだよ、フェイトはいつも心配してるからって」
「なのは……ありがとう……」
いつの間にか、なのはの臨死体験を語る会になっていた。
しかもそれは、夢というにはあまりにリアルすぎる物だった。
帰り際、フェイトがレイジングハートを持っていった。
「レイジングハートはこの程度のことでは死なない、だから修理して貰ってくるね」
いつの間にか、なのはの心はいつものなのはに戻っていた。
シャマルの説得が上手く行ったのだろう、信頼出来る仲間がいる、
愛してくれる家族が居る、それをなのはに伝えることが出来たのが、
シャマルの大きな功績だった。
作品名:神手物語(ゴッドハンドストーリー)~名医の条件~10-18話 作家名:酔仙