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神手物語(ゴッドハンドストーリー)~名医の条件~10-18話

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 コンコン
「なのはちゃん、清拭と処置に来ましたよ」
「あ、綾乃さん、睦実さん」
 清拭とはまだお風呂に入れない人の体を綺麗に拭くこと、その時に着替えをする。
大体週2~3回程度ある。
「そろそろ傷跡のフィルムを剥がすわね」
「ちょっと痛いわよ」
 まずは背中から、メリメリと剥がされていく。
「うっ、痛たた~」
「あら、これは凄いわね、流石は院長先生だわ」
「どうしたんですか~?」
 2枚の鏡を使って見せられた自分の背中、傷跡一つ無かった。
背中にはフィルムを剥がした後が赤くなっている程度、醜い縫合の痕は全くなかったのである。
「こんな事って……」
 これが神の領域、無縫の極意、まだ安田潤司の腕を持ってしても何回かに1回しか成功しないと言われる神業だった。
 取り敢えず体を拭きながら傷があったであろう位置を消毒する。
今度は胸の方だった。
 メリメリ剥がされるのが痛い、でももうフィルムも卒業だった。
こちら側も縫い始めと縫い終わりに小さな傷跡が見られる物のそれ以外は全く傷跡が消えていた。
 小さな傷跡も2~3年有れば、完全に消えるという話だ。
「これなら大丈夫、ビキニだって着られるわ」
 その言葉に勇気を貰ったなのはだった。
 でも清拭はそのついでにおむつ交換となる。
とても嫌だった、すぐに涙目になるなのは、嫌な物は嫌なのだ。
「ゴメンね、もの凄く嫌だよね」
 綾乃はそう言って話を切り出した。
「でもね、なのはちゃんの頑張り次第ではもうすぐバルーンとおむつを卒業出来るかも知れないの」
「えっ?それってどう言う?」
「今日の午後から運動リハビリが始まるのよ、まずはベッドから自分で起きられる様になること、それが出来る様になったら介助して貰って車椅子に移動できるようになること、そして車椅子から介助して貰ってトイレに移れる様になること。
ここまで出来る様になったらバルーンとおむつは卒業よ」
「うん判ったよ、私頑張るから!」
 目の前におむつ卒業という目標が出来るだけで気分が違う、嫌なことから早く卒業したいという思いが、なのはの根性に火を付けた。
 その日のお昼、桃子が水筒に詰めたキャラメルミルクと地元特産のミカンを使ったゼリーを持ってきてくれた。
 食事そっちのけでゼリーとキャラメルミルクを平らげる。
病院の食事は不味い、どうしてもこっちの方が良いのだ。
「ねえ、なのは、もっとお母さんに甘えても良いのよ、こんな時だからもっと甘えて欲しいの」
「うん、判ってる、判ってるけどなんか違う気がする。
今は頑張る時なんだと思う、頑張ってどうにか歩ける様になりたいの、余り迷惑掛けたくないから……」