神手物語(ゴッドハンドストーリー)~名医の条件~10-18話
第15話 桃子の企み
翌日、まずは午前のリハビリ、そこには難なく起きあがってみせるなのはが居た。
夜の内に何度か練習していたのだ。
じゃあ今日の午後から車椅子に移る練習だよ?かなりきつくなるからね。
理学療法士の先生はそう言っていた。
お昼はカレーだった、毎週一度のカレーこの食事が一番マシな病院食だった。
カレー以外はもの凄く不味いのだ。
パスタはナポリタンなのに殆ど味がしなかったりチーズがかかっていないし、煮魚にしても味が薄いと言うか無い。
蕎麦やうどんもツユの味が殆どしないというのは恐ろしく不味い物だ。
そのくせやたらと多いニンジンとネギ、食事の不満は相当な物だ。
それだけにカレーは嬉しかった。
カレーの出る日はなのはにとって天国なのだ。
しかも今日はハンバーグカレー、自然とテンションが上がる。
カレーの締めに牛乳というのもまた良い、こういう食事なら体力の回復が早いのに……と常ずね思うなのはだった。
歯磨きの後午後のリハビリが始まる。
「はい、じゃあ僕の首に抱き付いて」
理学療法士の先生に抱き付くなのは、先生はなのはのお尻の後ろで手を組んでなのはを持ち上げると簡単に車椅子に移し替えた。
「持ち上げる時、なのはちゃんの足の間に自分の膝を入れるのがコツなんです。
こうすると、万が一なのはちゃんが手を滑らせたり、こちらが手を滑らせても腰を落とすことでなのはちゃんを受け止めることが出来ます」
今度は家族が挑戦する、コツを掴むのが意外と難しい、だんだんとコツを掴む様になってきた頃なのはの方が限界だった。まだまだ体力が足りない。
でもすぐに眠くなることはなくなってきた。
その代わりリハビリが終わって少しするともの凄くお腹が空く、
「お母さん、お腹減った、何かおやつちょうだい」
リハビリが進むにつれ、だんだんと食欲が増えてきたなのは、それに伴い少しずつ体力も付いてきている様だった。
「綾乃さん、今日車椅子に移れたよ」
「そう、じゃあ明日か明後日にはおむつとバルーンは卒業ね」
その言葉になのはの目が輝く、やっとこの嫌なおむつ交換を卒業出来る。
それだけがなのはにとって希望だったのだ、しかもゴールが見えてきた。
「それからね、おむつを卒業してもまだトレパンよ、
バルーンを抜くと、おしっこが漏れやすいの、
リハビリで力を入れてもおしっこが漏れなくなるまではトレパンかな?」
トレパン:トレーニングパンツ、穿くタイプの紙おむつである。
「多分1週間ぐらい掛かるわよ、それをクリアしたら普通のパンツね」
次のゴールまではまだ遠かった。
「自分の力でおトイレに行ける様になったら退院だからね」
最終目標がはっきりと目の前に示されていた。
翌日トイレへの移譲を覚える高町家、もうこれで誰かに手伝って貰えばトイレには行ける様になった。
その日の夜のおむつ交換、これが最後のおむつ交換だった。
「じゃあ抜くわよ、ちょっと熱いけど我慢してね」
「あぁんっ」
綾乃がバルーンを引き抜いた。
抜かれる瞬間もの凄く熱いというか痛いというか、そんな感じがなのはを襲う。
そして準備されていたトレパンに履き替える。
「今夜からおトイレに行きたかったら誰かを呼んでね、連れて行って貰えるから」
作品名:神手物語(ゴッドハンドストーリー)~名医の条件~10-18話 作家名:酔仙