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神手物語(ゴッドハンドストーリー)~名医の条件~10-18話

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 翌日から退院に向けた本格的なリハビリが始まる。
綾乃さんの言った通り力を入れるとちょっと出てしまう、それが嫌だったがそれはそれで仕方がない、車椅子を使いこなし、自分でトイレに行けなければどうしようもないのだ。
 まずは車椅子への移譲、そしてトイレへの移譲である。
まあ、トレパンはトイレで履き替えれば問題はないし一袋でかなりの枚数入っている。
 要らなくなるまでに全て使い切れるか心配なぐらいだ。
 病院の中を車椅子で移動する様になると他の患者の様子が気になり出す。
多くの人がバルーンの尿バッグを持っている。
自分と同じ悩みを抱えている人が如何に多いか?を痛感せざるを得なかった。
でも、それ以上に驚いたのは誰もそんな悩みもないかの様に振る舞っていること、
誰も腐って落ち込んだりしては居なかった。
 それはリハビリ室でも同じだった。
尿バッグを持ったままリハビリしている人は多い、それは恥ずかしいのではなく自分が病人だとしっかり認識しているからそうしているのだ。
なのはは自分がしでかしたことが恥ずかしかった。
 嫌だという気持ちを爆発させ回りに当たり、大事な相棒まで酷い目に遭わせてしまった。
自分の弱さを認識した瞬間だった。
「こんにちは~」
 挨拶をしてリハビリ室に入っていく、途端に他の患者達に取り囲まれてしまうなのは、
彼女はリハビリ室のアイドルだった、屈託のない笑顔に他のみんなが勇気を分けて貰った。
「君はどこを手術したの?」
「ぁ、私心臓を……」
「そりゃあ大変だ、頑張って」
 掛けてくれる言葉が暖かかった、他の患者さんともすぐに友達に成れた。
 リハビリ室では車椅子から立ち上がる練習が始まる、
目の前の手すりに手を掛けて立ち上がるのだが、
足を一歩踏み出すのがこれほど大変だとは思わなかった。
 そっと床に足を着くまでは問題がなかった。
だが、立ち上がった瞬間、つま先から脳天まで激痛に貫かれる。
足を使っていなかったこと、2ヶ月間歩いていなかったことが、
筋力を低下させ、神経を過敏にさせていた。
 余りの痛さにその場に倒れそうになる。
今度は水の時の様にすぐには慣れそうにない。
その痛さを少しずつ克服しながらリハビリを続けるしかなかった。

 まだ立ち上がることさえ出来ずに結局その場にへたり込んでしまった。
肩で大きく息をしている。まだ体力も足りない、力も出ない。
 立てない悲しさに泣きそうになりながらも、それでもどうにか立ち上がろうとするなのはにユーノが背中を差し出した。
どうやら負ぶされと言うことらしい。
 まだユーノの力では正面からなのはを抱き上げることは難しい。
でも本人なりに考えたのだろう?オンブなら充分になのはを持ち上げることが出来ると。
 ユーノの背中に体を預けるなのは、見た目ひ弱そうに見えるユーノだが、
その背中はいつの間にか逞しく成りつつあった。
(ユーノ君の背中ってこんなに広かったんだ?)
 ちょと新鮮な思いをするなのは、彼の背中は温かくて広かった。
思わずその背中にうっとりと顔を埋めた。
 一方、ユーノもまた大変だった。
背中にしっかりと感じる二つの小さな膨らみ、もう胸が出来てきている。
年頃の男の子としてはドキドキ物である。
 そして何より絶対になのはを下に落とす訳にはいかない。
車椅子の位置を確認して後ずさり、どうにか座らせることに成功した。
 そんな様子を見つめている桃子と士郎、特に桃子は二人に熱い視線を送っていた。
「ねえ、あなた、帰ったら大事な話があるんだけど良いかしら?」
 それがとんでもない話だとは士郎もまだその時は気が付かなかった。