神手物語(ゴッドハンドストーリー)~名医の条件~19-29話
第23話 婚約……「高町なのはは俺の嫁!?」
同日午後6時クラナガングランドホテル最上階レストランにて……
レストランを貸し切っての祝勝会だった。
まあ、100億入る訳で100万やそこら出した所で惜しくはなかった。
そんな高町夫妻は改めてシャマルの前に深々と頭を下げた。
「シャマルさん、やはりあなたはなのはの命の恩人だ。
私たちは一生を掛けてもこの恩を返させて頂きたい」
深々と頭を下げる両親を見つめるなのはもまたシャマルには時別な思いを抱いていた。
「めっそうもない私は当然のことをしたまで救って当然ですわ、私はあの時出来ることをしたまでですから」
シャマルさんの人となりが良く判るそんな一場面だった。
一方、
「すいませんねえ、証人として来て頂いたのに出番が無くて」
リンディー提督と話しているのはシャサーニュ・モンラッシェ・スクライア族長、リシュブール・スクライア、レイニャック・スクライアの3人である。
いずれも一族の重鎮だ。
そんな3人へ近付く影は桃子さんだ。
「こんばんは、高町なのはの母で桃子と言います」
まずは他愛のない話題からはいる。
そして話題はレリックへ、
「あれは非常に危険な物でね、暴走が始まると大変なことになる。
暴走から10分足らずで最終的には大爆発する訳だが、強力な封印術の出来る魔導師ならなんとか暴走を抑えることが出来る。
幸いあなたの娘さんは強力な封印術の使い手でもあり、並の魔導師や海賊では相手にならないほど強い。
だからあの現場に呼ばれたのだ。しかし、この様な事になったのは我々にも責任がある、もっと人の配置に配慮すべきだったと……」
そう言ってシャサーニュ族長は深々と頭を下げた。
「いえ、そんな恐縮です」
桃子さんの方が、更に頭を下げる。
そしてまた他愛のない話へ……何時しか話はユーノの事に及んでいた。
「実はお宅のユーノ君について何ですが……」
「……と言うようなことを考えていまして……」
「良いよ別に、あの子は元々孤児だったのを引き取って育てた子だし、あの子はあの子で自分の将来について考えとるみたいだし好きにすれば?
うちは基本的に放任主義だから……」
なんか拍子抜けしたみたいに簡単に話が決まってしまった。
そう言ってなのはを見つめた族長は有る事に気が付いた。
「なんだかんだ言ってる割には子供達の方がしっかり将来を考えてるじゃないか?」
そんな一言に「?」な桃子さん、
「あの首飾りはスクライア一族の求婚の証明(あかし)なんですよ。
それを着けているという事は求婚を受けたという証明(あかし)なんです」
「ええっ?」
どうやらユーノは桃子さんの計画を何段階か飛び越えていた様だ。
「ユーノ君ちょっとこっちにいらっしゃい~」
ユーノが会場の片隅に呼ばれる。
「あの首飾りの意味を聞いたわよ、まだなのはにも説明してないのよのねえ?」
「ごめんなさい、あの……その……」
なんたる事かユーノは勝手に「高町なのはは俺の嫁」宣言をしていたのだ。
しかも家族にも、なのはにもまだその話をしていなかった。
ユーノはこちら側の男になのはを取られたくなかった。
だからなのはにあのネックレスを着けていて貰う事で、既に予約済みであると判らせ悪い虫が付かない様にしていた。
それと同時に一族にも自分の嫁であるとアピール出来る二重の効果を狙ったのだ。
「別に良いわよ、ただねえユーノ君がうちの子になってくれたら私は嬉しいかなって思うの」
「えっ、それって……」
「つまり、なのはのお婿さんとしてうちに来てくれたらって思うの」
「はい、喜んで」
そう答えるユーノににっこりと微笑む桃子だった。
「次は、なのはね」
今度はなのはを呼ぶ、丁度マスコミの取材に辟易していたなのははやっとその場を逃げ出せたのだった。
「ねえなのは、素敵なネックレス付けてるけど、その意味って知ってる?」
「え、これお誕生日プレゼントじゃあないの?」
「うふふふふふ」
意味深な笑いを浮かべる桃子。
「そのネックレスはね、婚約の予約なの」
「えっ?」
「ユーノ君はもう少し時間が経ったら話そうと思ってたみたいよ」
「ふにゃぁぁぁぁぁぁぁぁぁ!!」
思わず真っ赤な顔をして思わず悲鳴を上げるなのは、
それが回りの注目を集めてしまう。
「な、なんでもないです」
なんとかごまかせた物の、まだ顔は真っ赤だ。
「で、なのははどうなの?ユーノ君の事どう思っているのかしら?」
「ぁ、あのですねぇ……その……」
「実はね、もう向こうのお家の方と話し合って公認しちゃったの」
桃子のとんでもない一言に、更に呆然とするなのは、
「この前病院でね、リハビリの時見てて思ったの、なのはの一生を支え続けてくれるのはユーノ君しか居ないってね」
そう言ってそっとなのはの肩に手を置いて、なのはの視線に合わせて腰をかがめる。
「ねえ、なのははどうなの?実際ユーノ君の事をどう思っているのかしら?」
「ぁ、あの……その……ゆ、ユーノ君なら良いかなって……」
もじもじしながらそう答えるなのはがとてもほほえましかった。
「まだ結婚しろって言ってる訳じゃあないからね、ただユーノ君との仲だけは大切にしなさいよ」
言い聞かせる様になのはにそう言ってその場を離れた桃子、何だかとても嬉しそうだ。
今度はユーノがなのはの所へやって来る。
そんなユーノに顔も合わせられないほど真っ赤になるなのは、見ていて可愛い。
「あの、ゴメン、その、あの、本当は後2~3年経ったら話すつもりだったんだ」
「……酷いの、そう言う事は先に話して欲しかったの、でも……」
「でも何?」
「でも嫌じゃないよ、これ大切にするね」
意外にあっさりと婚約は成立していた。
こうして、宴の夜は更けていった。
作品名:神手物語(ゴッドハンドストーリー)~名医の条件~19-29話 作家名:酔仙