神手物語(ゴッドハンドストーリー)~名医の条件~19-29話
一方シャマル。
アリサに作って貰ったニセの住民票、ドイツ出身で日本在住という事になっている。
それを持ってアメリカの学生ビザを申請する。これは上手く行った。
それから編入試験の願書、向こうでの滞在用の住民登録、やる事はたくさんあった。
それでも6月を掛けて彼女は殆どの準備を済ませていく、残るは聖詳大からの紹介状、医学部の教授に書いて貰うだけになった。
だがこの教授とんでもない男だった。
「久保田教授、この前お願いした紹介状の件何ですが……書いて頂けるのでしょうか?」
「シャマル君、君は何を言って居るんだね、
私の許しもなくヴァルハラに出入りしているそうじゃないか?
しかも手術まで見学させて貰っているとか?
別に私が紹介状を書くまでもないんじゃないのか?」
「そ、そんな、私は別に、あそこには知り合いが入院していた為に
出入り出来るようになっただけで……
別にそんな許可を取るとか取らないとか関係と思いますが」
「関係ないだと?関係はあるんだよ、あそこにだって私の力が及んでいる、
私の許可無く出入りするというのであれば、あそこへの人材派遣を止める事だって可能なんだよ、
つまり、医師の派遣がなければ病院の経営は成り立たない、私にはその権限があるんだよ」
「なんでそうなるんですか?たかだか知り合いが入院して居ただけの事で」
「君が新しいシステムで練習している事や、手術に立ち会っている事も知っている、それでなお、言うかね?」
「医者の人事は大学の教授が握っているのだよ?」
「もし、どうしても書いて欲しいというのなら今夜どうかね?一晩私と付き合っては?」
とんでもないスケベ医者だった、パワハラ、セクハラの塊のような男だった。
そして権力を傘に、シャマルの肉体(からだ)を求めてきたのだ。
「いやぁぁぁぁぁぁ!」
それだけ無くシャマルに抱き付いて胸まで揉む始末、思わず彼をひっぱたいて逃げ出すシャマルが居た。
そして翌日彼女の名前は出席簿からも削られていた。
教授が中退扱いにしてしまったのだ。
だが彼がしでかした事は、やがて彼の人生終了のお知らせをする事になろうとはまだ知る由もない事だった。
作品名:神手物語(ゴッドハンドストーリー)~名医の条件~19-29話 作家名:酔仙