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神手物語(ゴッドハンドストーリー)~名医の条件~30-40話

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第34話 手術室の女神


「そ、そんな……」
「どうした?シャマル?」
「心臓の中で弾丸(タマ)が止まっている!どうしよう?」
 こんな時に限って心臓を手術出来る医者が居ない。全員学会に出払っていた。
「もう無理なんじゃねぇ?」
 一人の学生がそう言った。
「これは仕方ないよ、俺たちじゃあどうしようもない。
せめて他の臓器だけでも取り出して移植に回した方が、より多くの人たちが救える」
 無情だが尤もな意見が出る。
「見捨てるんですか?この子はまだ生きて居るんですよ!
この子の命はまだ生きる事を諦めては居ないんですよ!」
 シャマルが反発する。
「諦めよう、下手に手を出して死なれても責任を追及されるだけだ、ここで諦めても罪には成らないよ」
 一般外科の指導医までそう言った。
「私が執刀します、責任は私が取ります、緊急オペの準備を!」
 シャマルはそれが許せなかった、これではミッドチルダの病院と何も変わらない、自分の力でなのはを救えなかったあの悔しい思い、救えるかも知れないのに諦めてしまう事が自分には許せなかった。
 女の子を手術室に運ぶ、もう本当に時間がなかった。
「君たち、一体何をやっている?」
 アイザック・ウォルフ・ハーパー学長だった。
「それはいかん私も手伝おう、手の空いている者は手術室に入りたまえ」
 この学長、以前は外科医として鳴らした腕の持ち主だった。
そして安田潤司とも盟友である。
 もう既に挿管が終わり麻酔も入っていた。
たまたま腕の良い麻酔科医が居てくれた事は不幸中の幸いだった。
 シャマルが既に傷口を大きく切り広げて肋骨を切り取ろうとしていた。
メスを二振りした瞬間肋骨が4本切り落とされていた。
(これは潤司の技この娘一体何者だ?)
 ハーパー学長ですらそう思った。
「これセラミックアンカーを打っておいて下さい。人工心肺繋ぎます」
(早い、しかもこのやり方、北見柊一を見ているような……そうか、この子が潤司が言っていたヴァルハラの弟子か?)
 人工心肺が回り始める。
ここまで30分を切る早業、これで取り敢えずすぐに死ぬ事だけはなくなった。
「低体温下手術で行きます、氷を入れて下さい、体温は32度をキープです、
輸血量増やして下さい、昇圧剤投与、人工血液も入れて下さい、心臓一旦止めます」
 矢継ぎ早の指示が飛ぶ、その瞬間、彼女の姿にもう一人の医師の姿が重なった。
 心臓には小さな穴が空いていた。
22口径のメタルジャケット弾だった。
口径が小さかった事と弾がメタルジャケット弾だった事が幸いし、心臓の破裂と即死を免れたのだった。
 シャマルはその穴を少しだけ切り広げると迷うことなくピンセットで弾丸を掴んで見せた。
 そして丁寧に心臓の穴を塞いでいく。見事としか言い様のない手術、しかし、北見柊一の様に厳しさを感じる事はない。
むしろ優しさと暖かさに満ちあふれた手術だった。
 心臓の傷を塞ぐと肺の傷も見る。やはり小さな穴が空いている。
これも縫っては結紮の繰り返し、しかも肺は空気漏れがないように細心の注意を払わなければいけない臓器、慎重な手術が続く。
(凄いな、まるでベテランの心臓外科医を見ているようだ)
「終わりました、生食洗浄、ドレナージ」
 また矢継ぎ早の指示が飛ぶ。
「さあ、帰っていらっしゃい」
 そう言って優しく電極を入れると心臓が動き出す。
「肋骨を接合します」
 レーベンで散々練習した事がこんな所で役に立った。
なのはを救えなかったあの時の思いは今新たな救いとなって一つの命を助けようとしていた。
「接合終わりました、縫合に入ります」
 それはまた美しい縫合だった。
埋没式で縫い終わる頃には殆ど傷が分からないほどに。
「フィルムお願いします」
 手術が終わった瞬間誰もが涙を流していた。
シャマルの姿が女神に見えたのだという。
それ以来シャマルは「手術室の女神」「手術室の聖母(マリア)」と呼ばれるようになった。