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神手物語(ゴッドハンドストーリー)~名医の条件~30-40話

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 手術が終わった頃、病院の前に猛スピードでやって来たタクシーから3人の医師が駆け込んできた。
 心臓外科の指導医、循環器外科の指導医、もう一人は北見柊一だった。
学会でロスまで来ていたのだ。
 3人が着替えて手術室に来た時、既に手術は終わり学長を中心に反省会をしている最中だった。
「アレ?俺たちの出番は?」
「無いよ」
 つれないお言葉だった。
 すぐに手術の記録映像がチェックされる。
「フッ、俺の教える事はもうほとんど無いな?化け物に成長しやがって」
 北見が嬉しそうにそう漏らす。
「北見君、素晴らしいよ、流石はヴァルハラの弟子だ。
この絶望的な状況でただ一人諦めずに手術に望んで成功させた。良くここまで彼女を鍛えてくれたよ」
「お言葉ですが、学長、鍛えたのではありません、彼女が進んで努力した結果なのです。努力こそが人を大きく成長させるのですから」
 そうにこやかに答えたまでは良かった、そこから急に険しい顔になる。
「所で諦めたとはどう言う事かな?説明して貰おう」
 北見の怒りの表情に学生達が真っ青になる。
ついでに言うなら一般外科の指導医もまた同じだった。
シャマルだけが当然という顔をしていた。
「シャマルさん、君はヴァルハラで何を学んだ?一言で言うならどう表現する?」
 北見の問いかけに少し考えてシャマルはこう答えた。
「そうですね……一言で言うなら諦めない心でしょうか?
患者さんが生きる事を諦めていないのに医者が諦めたらそこで命が終わってしまうんです。
だからどんなに絶望的でも絶対に諦めない事、諦めずに努力する心、そして患者さんに対する愛情でしょうか?私はヴァルハラで技術以上にそう言う心を、
ヴァルハラ魂を注入して頂いたんだと思います!」
「ヴァルハラ魂か……テルに良い土産話が出来た」
 北見柊一はそう言ってロスを後にした。

 数日後、シャマルは学長に呼び出されていた。
「シャマル君、本来なら来年3月でないと受けられない医師免許試験を
今度の12月に受けてみないかね?本来は転入して半年以上勉強しないと
受験資格がないんだが、君は特例として推薦する、どうだね?」
「はい!喜んで!」
 こうしてシャマルは12月の試験に向けて厳しい受験勉強をする事になった。