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神手物語(ゴッドハンドストーリー)~名医の条件~30-40話

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第35話 父娘衝突する

 「今日は栗ご飯やで?」
 シャマルがアメリカで頑張っていた頃高町家では相変わらずの日常が繰り広げられていた。
「栗ご飯最高ですぅ~」
「ポメちゃん相変わらず良いタイミングで現れるよね?」
「だってこの時間ならご家族全員揃っているし、
書類も作りやすいです」
 苦しい言い訳だがご尤もだ。

「流石は牛乳効果や、ちょっと膨らんできたで?」
 そう、牛乳の効果なのか?はやての胸もちょっとだけ膨らみ始めた。
「リハビリの方はなのはちゃんに追い付かれてしもたけど、こっちは必ず追い付いてみせる!」
「私は、貧血がどれだけ解消したかなぁ?」
 この所体の調子が良い、体力が無さ過ぎて眠くなるような事が減り、少しずつ筋力が付いてきたと実感出来る。
「早くリミッターを解除して貰えないかな?」
 もうそろそろリミッターを解除して欲しい、早く空が飛びたい、でかいのを思いっきりぶっ放してみたい、そう言う欲求が込み上げてくるなのはだった。


「あのね、お父さん、お願いがあるの」
「何だ?」
「そろそろリミッターを解除して欲しいの」
「ダメだ、今のお前にはまだ危険すぎる」
「なんで?そんなのやってみないと分からないよ!それに、暴走するより消費した方がずっと良いのに!」
「カートリッジがあるじゃないか?それに心臓や骨って言うのは簡単には回復しないんだよ」
「じゃあ何時になったら解除してくれるの?必ず近いうちに解除してくれるんだよね?」
「今のところ解除する気はない」
「お父さんのバカぁぁぁぁぁ!」
 こうして父と娘の第1回衝突は起きた。

 翌日から口を利いてくれないなのだった。
士郎は当然のように渋い顔で新聞を読んでなのはに声すら掛けない、高町家の中に険悪な空気が流れていた。


「なのはちゃんもう少しの辛抱や、せめて杖無しで歩けるようにならないと
解除してもらえんと思うよ?」
 はやてからの忠告だった。
 それから数日後なのははもう一度士郎に聞いてみた。
「ねえ、お父さん、何時になったらリミッターを解除してくれるの?
どんな条件をクリアしたらリミッターを解除してくれるの?」
 どうやら、解除の目標に向かって努力すると言っているようだ。
「そうだな、まずシャマルさんの診察を受けてOKが出る事、次に100m全力疾走できるようになることだ。二つの条件をクリア出来たら解除してやろう?」
「シャマルさんの診察は分かるけど、何で100m全力疾走出来ないといけないの?」
「100m全力疾走出来ると言う事は、それだけ心臓に負担を掛けても平気という事だ。
誰の目から見てももう大丈夫という所まで回復しなければリミッターを解除しないつもりだ」
 それは絶望的に遠い目標だった。
でも、クリアしない事には解除すらして貰えない。
 翌日からリハビリに励むなのはが居た。
遙か遠い目標に向かって努力するなのはだった。
「歩けるようになるだけでもどれだけかかるか分からないのに、走れるようになるって何時の話よ?」
 かなりご機嫌は斜めのようだ。
 そんなおり、士郎が読んでいた英語の雑誌を渡された。
「シャマルさんが向こうで頑張って居るぞ!なのはも頑張らないとな!」
 そこに出ていたのはあの絶望的状況から一人の女の子を救った緊急手術の話だった。
「ヴァルハラから使わされた女神L.Aに降臨する」
 もうシャマルは一端の医者として未来を嘱望されていた。
そしてもう、なのはだけの女神ではなかった、
救いを求める人々全ての女神様だった。
 ちょっと寂しい気持ちと嬉しい気持ち、自分も頑張らないとと気持ちを引き締めるなのはだった。
「シャマルさんは向こうで頑張っている。私だけ頑張らない訳にはいかない!」
 シャマルの努力を自分のライバルとしてなのはも頑張る、
そうやって少しでも早く歩けるようになりたかった。
もう痛みはほとんど無い、後は歩けるようにそして走れるようになるだけだった。