神手物語(ゴッドハンドストーリー)~名医の条件~30-40話
「しかし院長も恐ろしい事をしますね?下手したら自殺しますよあれ」
「大丈夫だ、テル、後一押し無ければそこまではいかんだろうよ」
だが、最後の一押しはアリサと士郎の手によって行われようとしていた。
週が開けて月曜日、その日経済誌の一面をとんでもない記事が飾っていた。
「聖詳大学グループ、TOBにより外資に落ちる」
そして職員室、そこにいたのはアリサとすずかだった。
「今日から私たちが新しい理事長と副理事長よ、解ったわね」
そう、アリサとすずかは金を出し合い学校その物を買い取ってしまったのだ。
そしていきなり乗り込んで学長と前理事長をその場で懲戒解雇したのである。
「何故解雇されたか解るでしょう?あなた達はしてはいけない事をして、この私達を怒らせたのだから」
こうしてアリサとすずかはそれぞれの役職に就く事になった。
ただ学業が忙しいので仕事自体は新しく雇った理事長代理に任せるそうであるが……
「さてと後一人解雇しないといけない人が居るんだけど……出勤していないようね」
「解雇通知を郵送しておきますか?」
そう久保田教授である。
彼は出勤していなかった、いや、出来なかった。
その日のタブロイド誌の1面は「大学内でセクハラか?学生を無理矢理中退させる?」と盛大にかき立てられ、シャマル以外の被害者が何人かインタビューに応じていた。
そして教授に対する恨み節で埋め尽くされ今回更に被害者が出た事、更には頼みの綱の学長と理事長が相次いで解雇されていたのだ。
もう誰も助けてさえくれない。
インターネットの掲示板は彼へのバッシングで埋め尽くされ、
更にはあのネット中継を見た者が「学生にすら負ける藪医者」と書き込んだ。
そこへ解雇通知が送られてくる。
それは久保田教授にとって破滅だった。
身から出た錆と言えばそれまでだが今までやって来た事の付けがやって来たのだ。
恐らくここまで叩かれると更には裁判にまで訴えられるだろう?
もう彼にはどこにも逃げ場が無く誰も助けてくれる人間など居なかった。
数日後、彼は近所の公園で首を吊って死んでいるのが発見された。
更にはそれがスキャンダルになり、元理事長と元学長にもマスコミの矛先が向いた。
この二人もやがて憔悴し久保田教授の後を追う事になった。
作品名:神手物語(ゴッドハンドストーリー)~名医の条件~30-40話 作家名:酔仙