神手物語(ゴッドハンドストーリー)~名医の条件~30-40話
第40話 救えなかった命
クリスマスも終わり明日は大晦日、もう後少しで1年が暮れようとしていた。
なのはははやて達と買い物に出ていた。
脇を固めるシグナムとシャマル、そしてその前を歩くヴィータとリィン、今日はおせちの材料を買い出しに来ているのだ。
明日からはやてのおせちの仕込みが始まる。
車椅子を歩行器代わりにして商店街を歩いていく。
一通り買い物も終わって通りを歩いている時だった。
もの凄いスピードで走ってきた車がなのは達の横を通り過ぎ少し先の人の列に突っ込んだ。
年末年始に多い飲酒運転だった。
何人かの人たちが倒れている。慌てて駆け寄って状態を見る。
「シグナム、警察と消防に連絡を!ヴィータちゃん、近くにAEDが無いか探してきて!」
シャマルの的確な指示が飛ぶ、シャマルはその間にヴァイタルのチェクを始めた。
5人倒れていた、腕の折れている人、足から血を流している人、この辺りはまだ大丈夫そうだ。
意識のない子供が二人、顔色の悪い女性が一人、シャマルは回りに気付かれない様に、クラールヴィントのセンサーを伸ばしてスキャンを始めた。
だが、一人の子供のスキャンを終えた時首を横に振った。
そして、その子の手を胸の前で組むと、自分も手を合わせた。
それを見たなのはとはやてが驚く、
「そ、そんな、シャマルさん、諦めないんじゃなかったの?」
「もうダメなの、この子はもう亡くなっているの……」
どう見てもまだ死んでいるようには見えない、顔も綺麗だし、
血も全く出ていない、それにまだ暖かい、その言葉が嘘のようだ。
でも息をしていなかった。
「そうだ、心臓マッサージ!」
そう言ってなのはが子供の胸に手を置いた瞬間だった。
ぐにゃっ
何かもの凄く変な感触だった。
それは、胸骨や肋骨が砕け心臓や肺が破裂していたのだ。
子供の口から大量の血と内臓の一部が溢れてくる。
「いやぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁ!!!!!!」
なのははその場で気を失った。
シャマルは取り敢えずなのはを車椅子に座らせると、すぐに他の怪我人を確認する。
命に危機があるのは2名だけのようだ。
もう一人の子供と母親はすぐにでも緊急手術が必要だ。
救急車が待ち遠しい、一刻を争う事態に時間だけが刻々と過ぎていく。
5分後、救急車が到着した。
「この二人は安田記念病院へ」
シャマルは、はやての携帯で安田記念病院に電話を掛けていた。
手短に状況を説明すると出来る限りの応急処置を執っていたのだ。
「私は医者です、私も病院に行きます」
シャマルはなのはをシグナムに託すと全員高町家に帰るよう指示して、救急車で病院に向かった。
警察の事情聴取に的確に答えるシグナム、そして、あらかた目撃情報を話して解放された。
作品名:神手物語(ゴッドハンドストーリー)~名医の条件~30-40話 作家名:酔仙