神手物語(ゴッドハンドストーリー)~名医の条件~30-40話
そして7月を迎えた。
何時上がるとも分からない梅雨、相変わらず降り続いている。
「あーあ、何時になったら止むのかなあ?、鬱陶しいし、蒸し暑いし、天気が悪いと傷跡が痛いんだよね」
なのはは鬱陶しい天気にご機嫌斜めなようだ。
未だ社会復帰を果たせず、リハビリの日々を続けていた。
最近は平行棒に加えて少しずつ歩行器での歩行訓練を始めている。
まだそんなに歩ける訳ではないが、新しいメニューが加わった事は、
彼女にとって新たな希望だった。
(今月中に平行棒を卒業して歩行器のみになってみせる!)
なのはの密かな誓いだった。
最近は宿題地獄からも抜け出し、時々石井先生が持ってきてくれる宿題とプリント問題だけになっていた。
もう後2週間もすれば夏休み、そんな時また嬉しい知らせが飛び込んで来る。
シャマルがアメリカの大学の編入試験に合格していた。
しかも現3年生ではなく5年生課程にだ。(アメリカの医大は5年間なのだ)
つまりは後1年やれば医者の免許を取る事も可能なのだ。
だがシャマルは1年も掛ける気はないようだ、出来れば半年後には医師免許の試験を受ける気で居るらしい。
まあ随分と無理をしているというか?無茶というか?相当に頑張っている彼女が居た。
シャマルはいろいろお世話になった知り合いや、ヴァルハラにもお礼かたがた挨拶に行く、シャマルにとって大学の友人や先生以上にお世話になった所だ、絶対にここだけは外す事が出来なかった。
「そうか?合格おめでとう、で実際通うのは9月からかな?」
「はい、三日前からあちらに住もうと思いますので、
8月の終わり頃までは日本にいる事が出来そうです」
「そうか?なら残り一月半、我々で教えられる限りの全てを教えてやろう。
レーベンの空いている日、時間、全てチェックして自分で予約を入れなさい。
その時手が空いている先生が必ず指導して頂けるよう頼んでおくから」
「はい、ありがとうございますっ!」
それからほぼ毎日、空いている時間が深夜だろうと関係なくシャマルはレーベンに没頭した。
その努力はヴァルハラの医師達をも驚かせる物で、更にはシャマルのその努力に比例するかの如くもの凄い吸収力で新しい技術を物にしていった。
作品名:神手物語(ゴッドハンドストーリー)~名医の条件~30-40話 作家名:酔仙