神手物語(ゴッドハンドストーリー)~名医の条件~41-48話
第46話 結婚式
「臨時休業のお知らせ」
「誠に勝手ながら、4月14~18日は臨時休業させて頂きます」
翠屋の入り口に臨時休業のお知らせが張り出されていた。
一方、桃子と美由希は既にウェディングケーキの仕込みに入っていた。
先ずは仕込み、休業前から仕込みに入らないと間に合わない、14日から制作に入るのだ。
ケーキの制作は翠屋で行うと言った物のただの結婚式ではない。
恭也の結婚式であり日本経済界の重鎮やら大物政治家、海外からの招待客など有名人、著名人が1000人規模で集まるのだ。
そんな場にショボいケーキを出せるはずもなくそれなりに立派でないと話にならない。
三日前から制作に入り、パーツごとに作られ当日朝現地で組み上げられる手筈だ。
戦場のような忙しさが翠屋の工房で続いている。
今は美由希が飾りに使う砂糖菓子の制作をしている最中だ。
なのはをデフォルメした可愛い天使だ、背中に羽根のある白いバリアジャケット姿のなのは、両手で赤いあめ玉を持っている。
「結構難しいわね」
そう言いながらも楽しそうだ。
一方、士郎は不破一族を呼んでいた。
そう、当日はテロリストにとって格好の標的である。
当日の警備体制や人員の配置、考え得るテロにどう対処するか?
など細かい調整に入っている。
みんなそれなりに忙しかった。
入学式から一週間、中学に入って圧倒的に増えた宿題の量に閉口しながら、なのは達は学校生活に少しずつ馴染んでいた。
ただ、今の所体育の授業だけはなのはとはやては見学である。
完治宣言の診断書が貰えない内は授業に出させて貰えないようだ。
特になのはは心臓付近を手術したという事実から、教師の方が万が一を考えて敬遠しているようだ。
そして今日は身体測定、はやてはまた成長している事が嬉しかったが、それ以上に大きい回りの女子にコンプレックスを感じていた。
特に、フェイトはこの頃特に発育が良い、回りの女子からも羨望の眼差しで見られている。
「やっぱ白人系は違うわよね」
とは、クラスメイト達の僻みである。
でも、はやてとなのはもクラスの中では羨望の眼差しで見られた部分もある。
あの腹筋背筋のトレーニングは思わぬ所で効果を発揮していた。
他の子に比べて明らかにくびれているのだ。
憧れのくびれである。
まだこの年齢だとくびれている子はそういない。
「なのはちゃん達細い!どうやったらウェストを絞れるの?」
仕方なくあの腹筋背筋のやり方を説明する。
それが如何にきつい事かも含めて、
しかも最近はあのやり方にバリエーションが加わっていた。
腹筋は顔を右に向ければ足は左に顔を左に向けば足は右にと言う具合に
捻りを入れたり、背筋も同じ要領で右手で左足を持って左手は浮かすとか、
左手で右足を持って右手を浮かすとか、そう言う捻りを入れたバリエーションが追加されていた。
「ねえ、なんで普通の腹筋・背筋じゃあダメなの?」
そう聞いてみた事がある。
「あのやり方はボディービルダーみたいな筋肉を付けるには向いているんだが、筋肉自体の持久力がない上に大した力は出せないんだよ。
おまけに体が太くなるし重くなる。
いわゆる速筋と言う筋肉を鍛えるやり方なんだ。
対してこのやり方は遅筋と言う筋肉を鍛えるやり方で、細身でいてなおかつ大きな力が出せるようになる。
筋持久力自体がもの凄く高くなるんだ。
これを続けると速筋が無くなって桃色筋肉という状態に変化してくる。
パワーと持久力を兼ね備えていながら細さを保てるというメリットがあるんだ。
ただし、もの凄くきついけどな」
士郎はそう言う事の専門家だ。
実は自身の受け持っているサッカー教室でもこれを教えている。
これをマスターした子達が既にジュニアユースで活躍しているほどだ。
それに美由希も恭也も全身桃色筋肉だという、それが彼らの強さの秘密だった。
「とにかく細うなりたかったら、血の滲むような努力をしないとダメって事やね」
はやての一言にかなりの女子が諦めたようだ。
それでもやろうという子もいるにはいたようだが、
長続きはしなかったようだ。
作品名:神手物語(ゴッドハンドストーリー)~名医の条件~41-48話 作家名:酔仙