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神手物語(ゴッドハンドストーリー)~名医の条件~41-48話

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 その日シャマルの目の前には一人の黒人の少女が横たわっていた。
脳死状態で今から心臓移植の為心臓を取り出すのだという。
そしてその心臓をシャマルに取り出せと言うのだ。
 だがシャマルはそれを拒否した。
少女は薬で昏睡させられているだけだと見抜いたからだ。
「拒否します!この子は脳死なんかじゃない!私は間違っても人殺しはしません、
FBIに通報しますよ」
 次の瞬間、相手の医師がピストルを取り出した。
「摘出して貰わんと困るのだよ、私が移植をする患者が待っているのだから」
「死んでもいない人間から臓器を摘出なんて出来る訳無いでしょ!」
「だったら殺すまでだ」
 少女の頭に拳銃を向けてトリガーを引いた瞬間だった。
吹き飛んだのは彼の右手だった。
 シャマルは正確にピストルの銃口にメスを投げていた。
45口径のコルトガバメント、銃口が大きい為に狙いやすかった。
「言ったはずです、罪もない人間を殺させはしないと」
 メスが入った瞬間反射的にトリガーを引いた為、手首から先は暴発に巻き込まれて木っ端微塵に吹き飛んだ。
 もうこれでは医者としてやって行く事は出来ないだろう。
右腕を押さえて悪徳医者がのたうち回る。
 シャマルは、通報する為に手術室を出ようとした。
しかし、外にいたのは地元のマフィア達だった。
「今あんたに出て行かれると困るんだよ、俺の息子が助からねぇ」
 移植待ちの患者は組長の息子だった。
息子はファロー四懲症で移植しか助かる道がないとこの医者から説明を受けていたようだ。
「ファロー四懲症は普通に手術すれば助かる病気です、私は過去に4例やっていずれも成功しています」
「バカな事を言うな!この先生は何百例も移植手術をやって来て移植以外に助からねえって言っているんだ!」
「バカな事を言っているのはそこの悪徳医者です!恐らく親の弱みにつけ込んで手術料の高い移植手術をしようとしているだけなんです。息子さんは私が必ず救います!」
 組長との睨み合いが続く、
下手をしたらその場で銃殺されても可笑しくない場面だ。
「とにかく息子さんのカルテを見せて下さい」
 カルテから、検査結果を読み取る。
「やっぱり……この移植やっていたら確実に失敗してましたよ」
「何?」
「移植には血液型以外に遺伝子の型が一致しないと出来ないんです。
この女の子とは一つも一致していません、もし手術が成功しても一ヶ月ほどで亡くなっていたでしょう」
「どう言う事なんだ?」
「拒絶反応です、遺伝子の型が16項目あるうち最低4つ出来れば10個以上一致しないと拒絶反応が起きるんです。
最初の一月は問題なく生きるでしょう、免疫抑制剤が効いていますから?
その間にどこかの病院に転院させて自分の責任は逃れるつもりだったんじゃあないですか?」
 シャマルは全てを見抜いていた、悪徳医師はその場を逃げ出そうと足掻くが敢え無く組員に取り押さえられた。
「殺さないで下さいね、まだ余罪がありそうですからしっかり吐かせてからこの世の地獄を味わって貰いましょう」
 次に息子の様子を確認する。
まだ手術はされて居らず眠ったままだった。
「ここの手術室は彼の血液で汚染されていて掃除するまで使えません、
息子さんはすぐにも手術が必要な状態ですので、このままヘリで大学病院に搬送します。
それから被害者とこちらの先生はFBIに引き渡させて貰います」
「それは出来ねえ!俺たちを騙したのなら必ず殺す!それが組の掟だ!」
「組長さんこれ以上つまらない罪を重ねないで下さい、お子さんが悲しみますよ。
それに死ぬより辛い目に遭うという事を彼には身をもって味わって頂きますから」
 それでもまだ納得の行かない組長。
「今私に従って貰わないと助かる物も助からなくなります」
 シャマルの強い視線に組長が折れた。
すぐに消防のヘリとFBIがやってくる。
 組員達はそれまでに撤収させられ組長はただの父親としてヘリに乗り込んだ。