神手物語(ゴッドハンドストーリー)~名医の条件~41-48話
それから二週間組長の息子は一般病棟に移っていた。
そしてフィルムを剥がされたその胸には傷跡一つ残っていなかった。
確かに手術したはず、自分も見ていた。
「これが女神の奇跡か?」
未だにその事実を信じられずに呆然としていた。
付き添いで来ていた組員でさえそれを奇跡だと見た。
それからの回復は早かった。
まだ3才の子供、悪い所が無くなれば見る見るうちに回復していく後一月もすれば退院できるという。
組長は改めてシャマルに礼を言おうとしたが生憎彼女は手術中だった。
シャマル先生は今日もまた新たな救いを実行していた。
それから数日後あの悪徳医師の裁判が始まった。
裁判官も陪審員達も彼の異様な姿に驚いた。
「これで本当に医者が出来るのか?」と。
その後の説明で逮捕直後のある夜を境に姿が変わった事を「神罰」として、その事に触れるのを止めて彼の罪を推し量った。
裁判ではそのあまりに卑怯なやり方に、大半の者が死刑を望んだが陪審員の一人が言った一言で判決が決まった。
「神様が殺す事を望んでいない以上、死刑にしなくても良いのでは?」
そして判決は終身刑で晒し刑とされた。
翌日から彼は路上の独房で公開された。
その異常な姿は人々から奇異と侮蔑と嘲笑の眼差しで見られた。
檻の前には彼の罪状と彼の身に起きた事が神罰として書かれた看板が設置され、それを読んだ人々が石を投げたり空き缶を投げたりした。
「お願いだ、もう殺してくれぇ!」
彼はそう泣き叫んでいたという。
因みに彼に下った判決は終身刑、一生晒し者である。
それから数年間、体調を崩して亡くなるまで彼は晒され続けたという。
それはまさに神罰だったのかも知れない。
その様子をあの組長も見に来ていた。
「恐ろしい、あれが神罰という物か……?
普通に殺してやる方が余程人間的ではないのか?
まだ人として死なせてやれるのだから」
彼は護衛の組員達と青ざめた顔でその様子を確認するとその場を後にした。
組員達でさえあの病院には神様がいると噂を始めたのだった。
作品名:神手物語(ゴッドハンドストーリー)~名医の条件~41-48話 作家名:酔仙