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神手物語(ゴッドハンドストーリー)~名医の条件~49-59話

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 それから数日経ったある日あの元組長がやってきた。
「あ、間に合わなかったか……?」
「どうされましたか?」
「ああ、学長さん、実はこの絵をシャマル先生に見て貰いたくて、このホールに飾って欲しくて持ってきたのですが……」
 それは縦3m、横2mにも及ぶ大作だった。
巨大なキャンバスに描かれていたのは、
純白の羽根で優しく天使達を包み込む女神だった。
その優しい表情はまさに子供達と戯れるシャマル先生その物だった。
 絵を見た学長も涙を流す。
その愛に溢れた絵に神に救われていたこの1年に感謝をせずにはいられなかった。
「良いでしょう、すぐに飾りましょう」
 すぐに業者を呼んで荘厳な額縁を付けその絵は飾られた。
 そこは大学病院の玄関を入ったロビーの一番奥、
丁度、会計を済ませる人たちが待ち合わせをするホールにもなっている場所、
長椅子が何列も置かれ教会のような感じだった。
 その真正面にその絵は飾られた。
その日以来、この場所で多くの人々が祈りを捧げるようになった。
そこはもう教会だった。
 ハーパー学長は外科医以外に神父の資格も持っていた。
彼は絵の下に演壇を置くとそこで聖書を片手に説法をするようになった。
命の大切さを神の愛を説くようになった。
 そしてあの絵にはこう添え書きが付けられた。
「嘗て、この病院に一人の女神様が降臨なされました。
 女神様は、死の淵にある人を救い、絶望に打ちひしがれる人に希望を与え、
 時に悪人に天罰を、子供達に愛を、全ての人々に祝福をお与え下さいました。
 そして、女神様は世界中の救いを求める人々の為に、
 この地を飛び立って行かれました。
 私達は忘れない、彼女が残した教えを、命の大切さと諦めない心を
 世界中の救いを待つ人々に、神の救いが有らん事を
        アーメン
                  アイザック・ウォルフ・ハーパー」

 彼は晩年、その命が尽きる前日までこの場に立って説法を続けていたそうだ。
亡くなったその時の満ち足りた顔は家族誰もが驚いたという。