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神手物語(ゴッドハンドストーリー)~名医の条件~49-59話

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 そして夜、道場稽古が始まった。
「今夜から、御式内という武術を教える。
この武術は御神流二刀小太刀の元になったと言っても良い武術だ。
ある程度治めれば素手で上級魔導師を一捻りできる」
「お父さん刀以外にそんな武術も出来たの?」
「当たり前だ御式内を覚えない事には御神の技は習得出来ん、
俺は7段、恭也は6段、美由希は5段の腕前だ。
まあ、お前達は(推定段位になるが)最低3段、
出来れば5段程度の強さになるまで修行して貰うつもりだ」
 士郎はなのは達を前に説明を始めた。
「そもそも御式内とは弘法大師空海が中国から5人の武術家を連れ帰った事に由来する。
その5人の武術家から教えを受けた新羅三郎義光(源義光)(しんらさぶろうよしみつ/みなもと・の・よしみつ)を流祖とし、
甲斐武田氏に伝えられ、甲斐武田氏の滅亡後は会津藩主・保科氏(会津松平氏)や甲斐武田氏の末裔を称する会津坂下の武田氏に引き継がれ、
その後、御式内として会津藩の上級武士にのみ極秘裏に教授されたとされている」
「ん~言葉が難しすぎて良く分からない」
「あのな、なのは……ぶっちゃけた話、今から1000年ぐらい前、
空海と言う偉いお坊さんが中国から5人の武術家を連れてきたんだ。
その5人の武術家に毎日のようにボコられながら源義光という人が教えられた格闘技を元に御式内を考え出したんだ。
その後御式内は甲斐武田家につまり武田信玄に伝えられたと……
そして武田家滅亡後は信玄の末裔が会津藩に身を寄せて現在に至るという訳だ」
「あのな、一つ質問いいやろか?」
「何だい?はやてちゃん」
「そんなに強い武術なら何で上杉謙信は川中島で武田信玄に殺されんかったのやろう?」
「良い質問だ、上杉謙信は九禅百式と言う武術を納めていたんだよ。
御式内に勝るとも劣らない最強武術だという話だ。
どちらも最強同士、とても譲れる物ではなかっただろう」
 士郎の頭の中では川中島の戦いが浮かんでいた。
その中で信玄と謙信がもの凄い必殺技を繰り出し合い戦っている、そして巻き込まれる雑兵達、良い迷惑だ。
「し、信玄、なかなかやるな!」
「ふ、おぬしもな!」
 こうして二人の間に奇妙な友情が芽生えた……
 と言う結末で士郎の妄想は終わった。
「ふ~ん、じゃあ御神流はもっと後の時代になってから生まれたの?」
「そう言う事になる、江戸時代に入った頃から平和すぎて武術は無用の長物になったんだ。
そしてだんだんと武術が廃れていくのを防ぐ為、上杉家は日本中から武術家をスカウトして家来に召し抱えたんだ。
江戸時代の初め頃は、会津藩はもの凄く汗くさくて暑苦しい超体育会系の藩だったらしい」
(作:有ったら嫌だ!そんな藩)
「御神の剣はそんな土壌があったからこそ生まれたのかも知れない。
その御式内に小野派一刀流と直心影流、鏡新明智流の技法を取り入れて、二刀小太刀として確立したのが御神流だ」
「ふ~ん、じゃあ御神流が成立したのは江戸時代の中頃なんだね?もっと前の時代かと思ってた」
「そうだな、思ったより歴史は浅いんだ。
成立して250~300年ぐらいだろうか?」
「でも、何でそれだけ凄い武術なのに余り広がらなかったの?」
「良い質問だ、フェイトちゃん。
実は形を変えて広がっているんだよ世界中に」
「世界中に?」
「そう、この辺の警察や民間の道場でも教えている講道館柔道や合気道も、元々は御式内から生まれた武術だ。
つまり元を辿れば同じってことさ」
 柔道は世界的に普及している最も競技人口の多い格闘技である。
「さて、お前達は一口に御式内と言っても多分何も知らないだろうが、
御式内には合気術、柔術、剣術、槍術、杖術、馬術、暗器術などがある。
その全てを覚えるのは不可能だから、本式の合気柔術と杖術を覚えて貰う」
「質問!空手って御式内とは違うの?」
「空手は明治時代になってから沖縄から入ってきた物だ。御式内とは関係ないんだ」
「脱線したが、まあ今夜は話している内に時間もだいぶ遅くなったので、明日から本格的に始めるぞ?
それから今夜中にこれを着られるようにしておきなさい」
 そう言って士郎が手渡したのは胴衣だった。