神手物語(ゴッドハンドストーリー)~名医の条件~60-70話
「ここも大きなお屋敷」
そう、ここが御神宗家本宅である。
江戸時代そのままの武家屋敷、それも相当に大きい屋敷だった。
以前、御神一族が事業拡大と東京進出を目指して東京に持った拠点は、あの忌まわしい爆弾テロによって潰えた。
この時、御神家当主である御神静馬を始めとする一族の殆どが犠牲となって、現在御神流当主は空席のままである。
その後、僅かに生き残った御神一族はこの御神の里で細々と暮らしている。
でも、バニングスとの契約があり海外で出稼ぎ労働する者も多かったりする。
現在、静馬の親戚筋の人物、御神真実(みかみまこと)が当主代理を務めていた。
「……御当主様におかれましては……」
堅苦しい挨拶が続いている。
なのはは、いい加減堅苦しさに辟易し足の痺れにも悩まされていた。
まあ、これが伝統的な武士の礼節という物である。
そして恭也と忍がそれぞれ挨拶して一応の報告は終わったようだ。
でも、そこからが本題だった。
「士郎さん、話があるんだが」
御神真実はそう話しかけた。
「実は、御神の当主を士郎さんか美由希ちゃんに継いで欲しい」
「俺は無理だ、同じ御神でも不破流だ、不破は御神の陰として生きる一族、
表に出る事は出来ないよ、夏織か美沙斗がここに戻って次期後継者を育ててくれればいいのだが、それに美由希には、翠屋を継いで欲しいと思っている。」
「なのはちゃんがいるだろ?」
「なのははいろいろ問題があってな、なのはが翠屋を継いでくれれば、美由希を御神の当主に推薦しても良いんだが、この頑固頭がそう簡単に納得してくれるとも思えんしなぁ」
「頑固頭って何よ、頑固頭って?」
愚痴る士郎になのはが文句を言う。
「はは、これは頑固そうだ、それで問題とは?」
そう言われると困ってしまう士郎、そこへ救世主が現れた。
やって来たのはアリサだった。
アリサはただ御神の里に遊びに来た訳ではなかった。
新たな契約をする為にここに来ていたのだ。
そして、ここに士郎が来ている事がアリサにとって一番の好都合だったのだ。
「何?次元世界進出計画だぁ?」
既に、アリサの会社は次元世界と取引さえしている物の、そこへ少数精鋭の警備保障会社を立ち上げようと言うのだ。
「なるべく優秀な人材を10~15名ほどお願いしたくて参りました」
「所で次元世界って何?」
「なのは、見せてあげたら?」
作品名:神手物語(ゴッドハンドストーリー)~名医の条件~60-70話 作家名:酔仙