神手物語(ゴッドハンドストーリー)~名医の条件~60-70話
第67話 組み手
「じゃあ、次の試合は……」
はいっ、と手を上げたのはなのはだった。
いつもならヴィータと試合をするのだが今日ははやてだった。
開始線で睨み合う二人、自信満々だ。
「始め!」
その合図の瞬間仕掛けたのはなのはだった。
両手とも中高一本拳の握りのままガードを固めてはやてに突進する。
はやてはその手を取るべく掴みに行こうとするが、はやての目前でなのはの姿がかき消える。
扣歩だった。
一瞬ではやての後ろに回り込んだなのはは左の正拳ではやての脇腹を打ち抜きに行った。
咄嗟にそれを回転しながら躱すはやて、躱しながら右の裏拳でなのはの顔面を狙う。
しかし拳を引きつつ後ろに飛び退いて躱すなのは、また振り出しに戻った。
そして、また中高一本拳の両手でガードを固めるなのは、何かをやろうとしているのは確実だが、まだ何を狙っているのか分からないはやて、慎重に間合いを取る。
やはり仕掛けたのはなのはだった。
また真正面から突進してくる。
ここでなのはが見せたのは手数勝負だった。
なるべく骨を避け、肉の厚い部分を狙って体中滅多打ちに中高一本拳を撃ち込んでくる。
それはまだ士郎が教えていない技「百重刺し」だった。
本来は体中にあるツボを狙って突く物だが、その知識がない為肉の厚そうな部分を狙って突いてきたのだ。
当然、はやては捌きで対応するのだが手数が多すぎて捌ききれない。
しかも一発でも当たろう物なら滅茶苦茶痛い。
ガードで出した腕にもマシンガンの様な乱打が叩き込まれる。
物の5秒も持たなかった。
ガードしきれなくなった腕が下がった瞬間、正拳が鳩尾に入ってはやてが崩れ落ちた。
まだ寸勁は出来ていない物の、その分強い正拳突きは正確にはやての鳩尾を捉えていた。
圧倒的強さを見せてなのはの勝利だった。
見学していたシャマルがすぐに治療に当たる。
骨折こそしていない物の腕から肩に掛けて痣だらけになっていた。
回復魔法で何とかなった物の相当にやばかった。
「ゴメンねはやてちゃん、でもお陰で新しいパターンを身に付けられたよ」
「もの凄く痛いわぁ、でもあれをなんとか出来へんとやばいなぁ」
やはりなのはは、それなりにセンスがあるようだ。
教えていない技であっても自分なりに考えて使いこなす。
このセンスはやがて大きく花開く事になる。
でも、それはまだ先の話。
作品名:神手物語(ゴッドハンドストーリー)~名医の条件~60-70話 作家名:酔仙