神手物語(ゴッドハンドストーリー)~名医の条件~71-80話
学長室にて、
「実はこの病院にもレーベンの導入が決まってね、
明日納入されるんだがどう言うシステムなのかまださっぱり分からないんだ」
「ぁ、それでしたら日本で随分使いましたよ、まだあちらの大学に行っていた頃安田記念病院で随分練習させて頂きました。
あれがもっと世界中に普及したならきっと腕の良い医者が数多く生まれる事でしょう」
「そんなに凄い物なのかね?」
「ええ、きっと驚きますわよ」
「ならシャマル先生にお願いがあるのだが是非レーベンでのデモンストレーションをお願いしたい」
「分かりました、お引き受けします」
こうして、翌日シャマルはデモンストレーションを行う事になった。
翌日、お昼過ぎ、シャマルは大学病院に姿を現した。
「あら、こんにちわ皇さん」
システムのセッティングに来ていたのは皇だった。
そんな皇にひそひそ話で話しかけるシャマル、
「良いですか?こんなオーバーテクノロジーをあちこちに売りさばいて?」
「はは、大丈夫だよ、あちらから頂いた物は1号機だけだから後は技術解析してこちらの技術で作られた物ばかりさ」
あの時技術解析を済ませたオーバーテクノロジーは月村重工で既に再現されていたのだ。
「それに、今不況に成りつつあるけどこの分野だけは不況知らずさ、既にスーパーMRIとレーベンがセットで10機近く売れて居るんだ。
1セット辺り、日本円で80億というのも随分お買い得だしね」
もの凄い金額なのだがそれでもお買い得なのだろうか?
「日本では既に何機か売れているけど海外はここが最初なんだ。これも一重にシャマルさんのお陰だよ」
シャマルは何のことだか分かっていないようだった。
「社長、セッティング終わりました」
向こうで社員がそう叫んでいる。
レーベンは1号機に比べて改良が加えられていた。
今までは皇本社からデータを送信していたのを各病院に巨大ストレージセンターを置いてデータの蓄積を行い、不足したデータだけを皇本社からネット配信する為、レーベンの起動速度が大幅に向上したのである。
「じゃあ、シャマルさん頼んだよ」
それを受けてシャマルが説明しながらレーベンでの手術を開始する。
選んだのはなのはの腕頭動脈吻合術だった。
「この当時、私はまだ皮膚と筋肉の縫合を覚えたばかりで……
……でも刺された彼女を救うにはとにかく縫うしかなかったんです。
そして応急処置の後彼女を救ったのは安田先生と北見先生でした。
それが切っ掛けで私はヴァルハラで学ぶ事になったんです」
そう言ってシャマルは手術を始める。
「レーベンは基本的に音声入力です。声に出せば必要な器具は現れます。メス!」
その瞬間、彼女の手にメスが現れる。
そしてあっという間に、
久保田教授を負かしたあの手術を再現して見せた。
レーベン自体の凄さもさることながら、シャマルの腕の凄さもまた他の医師の良い刺激になったようだ。
作品名:神手物語(ゴッドハンドストーリー)~名医の条件~71-80話 作家名:酔仙