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神手物語(ゴッドハンドストーリー)~名医の条件~71-80話

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第72話 奥義・吐納(とのう)

 なのは達は今日もまた稽古に精を出す。
この所毎日体育祭に向けてきつい練習をした上でまた稽古である。
でも体が着いてくる様になってきた。
 体の調子もかなり良い、
この分なら後2~3年すればユーノ君と結婚したって……
などと考えるなのはだった。

 以前は食事の後にやってきていたフェイトも最近は一緒に食事をして稽古に臨む様になった。
 いつもの賑やかな食卓だった。
食卓で娘達に囲まれて至福の時を過ごす士郎、この一時こそ彼にとって最も幸せな時間なのだ。
 他愛もないお喋りをしながら食事をする事がこれほど楽しいとは、彼の人生で最も充実した時期だった。
 そんな中ではやてがぽつりと漏らす。
「なんやな、なのはちゃん見てると羨ましいわぁ、お父さんもお母さんも揃ってるもん、私は小学校一年生の時からシグナム達に出会うまでずっと一人やったし、もう親の顔なんて覚えてないわぁ」
「はやてちゃん、それってどう言う事なんだい?」
 そう聞いた士郎にはやてが身の上話を始めた。
付けっぱなしだったTVから「ロード」が流れ始めていた。
(いけない、お父さんの一番弱いパターンだ)
 そう思ったなのはだったが既に手遅れだった。
そのあまりに悲惨な生い立ちに士郎は言葉もなかった。
更に追い打ちを掛ける様にフェイトがシグナムが自分たちの身の上話をする「ロード」の曲に乗せて。
 もう涙と鼻水でぐちゃぐちゃだった。
士郎は、意外なほどに涙もろかった。いや、美由希も桃子も貰い泣きしていた。
でも、最もツボにはまったのは士郎だった様だ。
 そして士郎ははやて、ヴィータ、フェイトの3人をぎゅっと抱き締めた。
この薄幸の少女達に一時でも父親として温もりを与えてやりたいせめてこの少女達に一時の幸せを与えてやりたいとそう願わずには居られなかった。