神手物語(ゴッドハンドストーリー)~名医の条件~71-80話
そしていつもの稽古、今日はまた気合いが入っている。
特に士郎が、いつもよりテンション高めで、きつい稽古を付けていた。
「今日は一つ奥義を見せよう、なのは、立ちなさい」
なのはが、士郎と向かい合う。
「どの様な技でも良い、俺を攻撃して見せろ」
そう言われてなのはが士郎に飛びかかろうとした。
「ぐっ、い、息が……」
しかし次の瞬間、喉を押さえるとなのはが倒れる。
呼吸困難を起こしていた。
何をされたのかさっぱり分からなかった。
士郎は開始線より大分後ろにいて何もした素振りはなかった。
見ていたはやて達でさえ、それが何か分からなかった。
「奥義、吐納(とのう)」
何もしないのに相手が倒れてしまうそれは、まさに究極の技だった。
暫くしてようやく起き上がるなのは、まだ咽せていた。
「なのは、何をされたか分かるか?」
「分からないよ、突然息が出来なくなって……もしかして息が出来なくしたのが奥義?」
「そうだ、今のが奥義だ」
なのはは、奥義を受けてなお何をされたか全く分からなかった。
「呼吸を読み、呼吸を整え、呼吸を合わせる、それが御式内の基本にして奥義の一つだ」
この前も今回も士郎はそう言った。
「もしかして呼吸?」
「その通りだ、呼吸を読み、呼吸を整え、呼吸を合わせることで相手の呼吸を操る事が出来る。
呼吸を操り、呼吸を乱してやる事で相手を無力化する技だ。
呼吸自体目に見えないから気付かれる事はない。
これを返すのは御式内か合気道の有段者ぐらいな物だ」
全く持って魔法以上に魔法じみた技である。
これをやられてミッドの魔導師で勝てる者が居るだろうか?
恐らくSSSでさえ為す術無く敗北するであろう事がはっきりと分かった。
「しかしなんやな?何もしないで呼吸が操られるなんてとても信じられんなぁ」
「取り敢えず受けてみるかい?」
今度は、はやてもフェイトもシグナムやヴィータまで一気に奥義を受けて倒れた。
まさかこれだけの人数でさえ一度に掛かるとは思っても見なかった。
暫くして立ち上がる4人、まだ自分の身に起きた事が信じられないで居た。
御式内の有段者は間違いなく魔導師にとって天敵だった。
「この技は既にお前達の中にある、今まで教えた事の応用がこの奥義だ」
奥義とは、教えられて覚える技ではなく教えられた事の中から気付く技なのだ。
作品名:神手物語(ゴッドハンドストーリー)~名医の条件~71-80話 作家名:酔仙