神手物語(ゴッドハンドストーリー)~名医の条件~71-80話
第74話 体育祭
9月末のある日、聖詳大学中等部の体育祭だった。
全体での準備運動の後それぞれの競技にはいる。
花形は何と言ってもスプリントだ。
100m、200m、100mハードル、
どれも、すずかが大活躍だ。
それに続くアリサとフェイト、3人とも学年記録を塗り替えていた。
いや、すずかに関しては学校記録を塗り替えて日本選手権の記録に迫るとんでもない記録を打ち立てていた。
スプリント競技の邪魔にならない様に隅っこの方で走り幅跳び、砲丸投げが行われていた。
走り高跳びはトラックの内側、グラウンドのど真ん中だ。
なのははと言うと大して活躍出来ないで居た。
確かに学年2位と健闘はしている物の2年の先輩に化け物が居た。
留学生にして女子柔道部の女主将だ。
あだ名は女小錦、トンガ出身のどでかい女だ。
とにかく砲丸の女子日本記録をあっさり塗り替える化け物っぷりに誰もが驚かされていた。
「むう~、これでは全然目立てないのです」
「まあ、しょうがないやろ、あの化け物には手も足も出せへん、次で挽回しようや」
早々に競技を終えて暇を潰す二人、ふと他の競技の成績を確認する。
あの筋トレは思わぬ効果をもたらしていた。
筋トレと言うよりは、柔軟運動が効果を発揮した
と言った方が正解なのだろう。
男子、女子とも7センチ近く記録を伸ばしていた。
背面跳びの柔軟性に信じられない効果を発揮してポイントを伸ばしている。
成績上位者に与えられるポイントの合計で、
各クラスの順位が決定される。
まあ、今のところ男子がそんなに足を引っ張っていないので何とか総合1位だったりする。
でも4位までのクラスが充分に逆転可能な位置に付けていた。
残る競技は4種目、いずれもお昼からの競技だがなのはの責任は重大だった。
次の競技絶対に落とす訳にはいかない。
残す競技は男子3000m、女子1500m、男子、女子それぞれのリレーである。
お昼ご飯は少なめに食べてもう一度念入りな柔軟運動でウォームアップ、何時でも出られる様に体を温める。
まずは男子3000m、そこそこ健闘してくれたので問題はなかった。
でも2位のクラスとの差があと3点にまで縮んでしまった。
そして女子1500m、なのはとはやてがエントリーしている。
なのはとはやては最初から飛ばす作戦に出ていた。
毎日のトレーニングの要領なら3000m走った所で問題はない。
むしろ他の追随を許さぬペースで走って回りを潰した方が展開的に楽だった。
スタートでトップに躍り出る物の、なのはとはやてを徹底的にマークして来る3年の先輩が二人いる。陸上部と水泳部の先輩だ。
なのはとはやては更にペースを上げて引き離しに掛かるがそう簡単には引き離せない。
それどころかこの二人とんでもなかった。
苦し紛れに足をかけて転ばせようと何度も足を出す。
鬱陶しい事この上ない。
頭に来た二人は念話で示し合わせると足刀を繰り出していた。
出してきた足の外側を足刀ですっぱり斬る様に掠らせた。
その足刀は鋭かった。
靴の横のエッジが利いた部分で振り抜かれたのだ。
先輩二人が足を押さえて踞る。
それを尻目になのはとはやてがワンツーフィニッシュを決めていた。
振り返ると二人の先輩は靴下の横がスッパリと切れ、足から血が滲んでいた。
二人は、足を蹴られたと抗議したが足を出した方が悪いと注意を受ける。
審判は公正に見ていた。
でもなのは達の足刀までは見抜けなかった様だ。
これでリレーで男女どちらかが優勝すればもう2位のクラスでも逆転は不可能だった。
当然の様にぶっちぎりで女子のリレーは優勝しクラスも総合得点で他の追随を許さず総合優勝を飾っていた。
でも本当の問題はその後に起きたりする。
作品名:神手物語(ゴッドハンドストーリー)~名医の条件~71-80話 作家名:酔仙