神手物語(ゴッドハンドストーリー)~名医の条件~81-90話
伊蔵が居合いの構えを見せる。
刀は3尺3寸の居合い刀、かなり広い間合いを持っている。
宮ノ内示現流:九禅百式の流れを組む剣術である。
薩摩示現流とは初太刀が違い宮ノ内流は居合いから入る。
奇しくも、500年の時を超えて、御式内と百式が相まみえる事になった。
既にもの凄い殺気がぶつかり合っている。
神速が早いのか?居合いが早いのか?勝負は一瞬で決まる。
恭也も小太刀を抜いて構える。
薙旋の体勢だ。
距離は伊蔵の間合い寸前だった。
お互い、もう技を放つしかない体勢、僅かでも気を抜いた方が死ぬ。
その瞬間、吹き抜けた風に木の葉が舞って二人の間を通り抜けた。
恭也の姿が歪む、伊蔵が刀を抜き……抜けなかった。
それは、薙旋ではなかった。
それは蹴りだった。
薙旋と見せかけて抜こうとした刀の柄を蹴りで止めたのだ。
次の瞬間、改めて薙旋を放つ。恭也が伊蔵の後ろに駆け抜けた時勝負は決していた。
伊蔵の体に4本の赤い線が走り次の瞬間にはバラバラの肉塊と化していた。
「バカな、大金をはたいて雇ったサムライだぞ、こんなバカな事が……」
キールは目の前で起きた事が信じられなかった。
「後はザコばかりか?なのはでも倒せそうだな?」
恭也は刀を納めてしまった。
「俺はちょっと家と店の方を見てくるよ」
そう言ってとっととその場を後にしてしまった。
「そうだなのは、残り4人、全部素手で倒せたら管理局への”仮”復帰を認めてやろう。
何なら殺しても良いぞ、どうせこいつらを生かして返すつもりはないし」
それはなのはにとって喉から手が出るほど欲しい目標だった。
管理局への復帰、いよいよそれが現実の物となってきた。
でも目の前にはザコクラスとはいえ、それなりの使い手が3人、3人相手はちょっと厳しい。
一人ずつなら何とかなりそうだが何とか一人で闘えるか?少し考えた。
「一人ずつかかってきなよ、私が遊んであげるから」
彼らの神経を逆撫でする一言だった。
作品名:神手物語(ゴッドハンドストーリー)~名医の条件~81-90話 作家名:酔仙