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神手物語(ゴッドハンドストーリー)~名医の条件~81-90話

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第84話 告白

 彼女の名前は「スー」8才の女の子だ。
彼女は早くに両親をマラリアで亡くし今は一族みんなで彼女を育てている状態だった。
 人見知りが激しく族長以外は懐かなかった彼女が一目見る成りシャマルには何故か懐いてしまった。
そして与那覇先生にも懐いてしまう。
 多分、二人の中に両親の面影を見たのだろう。
二人が仕事のない時はとにかくひっついて離れなかった。
 他のスタッフも3人の事を仲の良い家族に見えると茶化していた。
でも、それを真剣に考える人物が一人与那覇先生だった。
彼はこの先暫く複雑な思いを抱えて仕事をする事になった。
 アマゾンの支流がいくつか合流するこの場所はいろいろな部族が集まってくる。
 そして病人や怪我人を次々に運んできていた。
入院患者は少ない物の(重傷化すると入院する前に死んでしまう)、シャマル達の助けがなければ生きて行けない人たちばかりだ。
まあ交替で治療をしているので、それぞれのスタッフに掛かる負担は極めて小さく、一番のネックは暑さとの戦いであった。
 そんなときシャマルはスーの一族とパイナップルを取りに出かけた。
収穫はパイナップルだけでなく青いパパイヤ(野菜代わり)タロイモなど結構な量になった。
 そんなときだった。
ジャングルの奥から悲鳴がした。
 スーだった。
ちょっと目を離した隙に彼女は一人でジャングルの奥に遊びに行ってしまったのだ。
 彼女にジャガーが襲いかかっていた。
悲鳴を聞きつけていち早く駆け付けたシャマルは近くにあった石をぶつけて、ジャガーを彼女から引き離した。
血まみれの彼女を庇ってジャガーの前に立ちはだかる。
 でもそんな事でひるむ様な相手じゃなかった。
今度はシャマルに襲いかからんと低い体勢で構える。
 ジャガーがシャマルに飛びかかる。
でもその爪も牙も彼女には届かなかった。
 その瞬間、横から凄まじい速さで誰かが走り込んできた。
そのままジャガーを突き飛ばしたのだ。
「与那覇先生!」
 今度は彼がジャガーと対峙する。
ジャガーと言ってもかなりの大物、立ち上がれば2mに達する肉食獣である。
「大丈夫ですか?シャマル先生!」
「私は平気よ、でもスーちゃんが……」
 どうにかこの場所から彼女を運び出したい所だが、
下手に動けばジャガーが襲ってくる。
 しかもこちらは丸腰、絶望的な状況だった。
「仕方ねえ!出来れば殺生はしたくなかったんだが人の命が掛かっている以上やらない訳にには行かないな」
 食事の邪魔をされて殺気立つジャガーに負けず劣らずの殺気が辺りを包む。
 次の瞬間、ジャガーが飛びかかってきた。
だが、それは信じられない光景だった。
 飛びかかったジャガーの首元に穴が空いた。
その一瞬後には腹にも2個目の穴が空く、
ジャガーは内蔵をぶちまけて絶命していた。
「奥義、王流手(おうりゅうてい)」
 沖縄古式空手の最高奥義の一つだった。
二本抜手による槍の様なぶち抜き技である。
達人とも成れば瓦50枚を貫通するという。与那覇先生は沖縄古式空手の達人だった。
「今の内に早く!」
 シャマルはスーを抱きかかえて走り出す。
「お願い、生きていて!」
 船まで運んだ時その絶望的な状況に愕然とした。
まず血液型が分からない人工血液もない。
 手分けをして血液型を検査したり、献血の出来そうな人を探す。
 シャマルは傷の状況を確認していた。
レントゲンとエコーぐらいしかないこの船の中で他に彼女の状態を見られるのはシャマルのクラールヴィントしか方法がなかった。
 シャマルはスーを手術台に寝かせると人払いして状況の確認をする。
背中に大きなひっかき傷。
これは縫えば何とかなるし、治療魔法でも行けそうだ。
でも首筋に噛み痕がある。
牙が思いの外深く突き刺さっていた様だ。
 幸いにして頸動脈をすれすれで外れていた物の牙の一本が脊髄に達していた。
 もう一刻の猶予もなかった。
「緊急手術を行います!」
輸血用血液も400CC程確保出来た。
でも細菌検査などが出来ていない。
「輸血はリサイクル輸血と輸血用血液も遠心分離器に掛けて使用します」
 今出来る最善とシャマルの出来る最善で最高の手術が彼女の命を紡いでいく、
(絶対に死なせない!絶対に直してみせる!)
シャマルの気迫がスタッフを突き動かす。
 そして手術室は光に満ちあふれる。
「シャマル先生が光っている?」
 何人かの看護婦がそれに気付いていた。
目の前では奇跡が起きていた。
切れた神経繊維を一本一本丁寧に繋ぎまるで傷がなかったかの様に綺麗に縫合されていく、全て縫い終わった時には傷跡が分からないほどだった。
「流石だ、素晴らしい手術だったよ」
 マルク先生が褒め称える。
「悔しいけど、あなたには敵わないわ」
 シャロン先生も脱帽だった。
「見た目にいくら美しい手術でも実際に患者さんが治ってみなければ、この子が元の健康体に戻れなければ意味がないんです」
 シャマルはあくまで厳しかった。
「脊髄の損傷がやや酷かったですから後遺症が残る可能性が捨てきれないんです」
「大丈夫だ、シャマル先生がそれだけの手術をしたんだ、きっと良くなる成らないはずがないんだ!」
 与那覇先生がそうシャマルを励ました。