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神手物語(ゴッドハンドストーリー)~名医の条件91-101話

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 そんなはやてに時々シャマルからメールが入る事がある。
近況報告なのだがだんだんとその内容が暗く重くなってきていた。
 与那覇先生にスーという娘が出来たと言う辺りまでは良かったが、南アフリカに入ってからは一度だけメールが来ただけでその後音沙汰無しだった。
 TVのニュースではヨハネスブルグの悪夢を何度か伝えていた。
でも、このことをなのは達に喋ったらきっと助けに行こうと言い出すだろう?
 でも、自分たちが現場に行った所で何の役にも立てない、それどころか足手まといにしか成らない。
今、自分が何の力にも成れない極めて無力な存在だと、
これだけの魔力を誇りながら何も出来ない存在だと改めて痛感した。

 それから2週間、季節はゴールデンウィークを迎えた頃、シャマル達は南アフリカを離れコンゴにやってきた。
アフリカの赤道直下の国は内戦がやっと終結したばかりの国が多くもの凄く多くの難民を抱えていた。
 首都ブラザヴィルの郊外には難民キャンプが広がる。
皆、隣国アンゴラの内戦から逃れてきた難民達だ。
この難民キャンプを救済するのが今回の仕事な訳だがそれは救済と呼べる様な代物ではなかった。
 まず、考えられないほど劣悪な生活環境、まともな飲み水すらなく、水溜まりの水を啜り、口に出来る物なら何でも食べなければ生きていく事の出来ない人々、シャマル達のチームに何故小児科の免許を持った医師が多いのか?
この時始めてその意味を知った。同時にそれは更なる地獄がそこに待っていた。
 そこに待っていたのは命の選別、それも今度は生まれて間もない小さな子供達を選別する作業だった。
 劣悪な環境に加え食糧の大幅な不足、今日生きていても明日生きているとは限らないそんな命ばかり、それでも明日生きている保証のある命だけ救う、そうやって子供達が死に絶えるのを防ぐのだ。
 内戦は、人々の住む家を土地を家族を奪い、こうして難民キャンプに集まった人々を飢餓が更に追いつめる。
 マルク先生は言う、
「この先は、全て戦場の国々、そしてそれはどんどん酷い地獄になるだろう」
 それはまさに地獄の光景だった。
餓鬼地獄、まさにそんな光景が目の前に広がる。
食う物も食えず殆ど骨と皮ばかりになった小さな子供達、しかもお腹だけ異様に大きい、内蔵があるからではない。
内蔵に寄生虫が大量繁殖しているからお腹だけが異様に大きいのだ。
 そして配られた食糧を奪い合う様にむさぼり食う。
しかも暑さで傷み腐りかかった食糧も多い。
それでも食べなければ生きていけないから喰う、下痢を起こしただけで体力が尽きすぐに死んでしまう、そんな子供達ばかりだった。
 シャマルは、自分の決意が揺らいでいるとつくづくそう思った。
自分はこんな事の為に医者になったんじゃない、もっと多くの人々を救う為に医者になったのに、今やっている事は一体何だ?何故この地獄を救う事が出来ない?救済とは一体何だ?骨と皮ばかりになりもう動く事さえ出来なくなった赤ん坊の傍らにハゲワシがやって来てその子供の死を待っている。
 そこはまさにこの世の地獄だった。
 シャマル達は生き残れそうな子供達、寄生虫駆除の治療をする。
まあ、投薬しかない訳でそれが効き始めればとにかく栄養剤を飲ませる。
 例え僅かな栄養剤でも彼らにしてみればそれは大きな栄養源だった。
(もっと食糧があったなら、もっと飲み水があったなら)
 そんな思いが募る毎日だった。