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神手物語(ゴッドハンドストーリー)~名医の条件91-101話

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第100話 神の子

 その日もシャマルは難民キャンプを回る。
全体で2万人弱、乏しい医薬品と乏しい食糧ではまともな救済が出来るはずもなく人々はどんどん死んでいく。
最初は10万人以上居た難民達はいつの間にかそれだけ数を減らしていた。
どこかへ去ったのではないみんな死んでしまったのだ。
 難民キャンプのすぐ前には十字架さえ立てて貰えず遺体に土を被せただけの土盛りが延々と続いている。
 一体どれ位の数の人たちが眠っているのだろう?
あまりに悲しい光景にやるせない気持ちだけが募っていく。
 現状は極めて悪い、いや悪いを通り越して地獄だ。
子供達に薬を飲ませる事さえままならなかった。
その薬を飲ませる水さえそこにはなかったからだ。
「せめてまともな飲み水があれば一人でも多く救えるのに」
 病気にかかり殆ど無気力でただ死を待つ人々、それでも死にたくなくて、シャマル達に救いを求めてくる。
 それを救ってやる事の出来ないシャマル、地獄に赴くというのがこれほど過酷だとは思わなかった。
 その日も難民キャンプを回り子供達に薬を飲ませるシャマル。
たまたまスーも難民キャンプに付いてきた。
その時、転んで擦り剥いた子供を見つけたスーはつい使ってしまった。
回復魔法を……スーの手が光を発している見る見る傷が消えていく、それはまさに神の奇跡だった。
 それを目の当たりにした難民達がスーの回りに押し寄せる。
まるで亡者が助けを求めるが如くうじゃうじゃと、それはすぐにパニックを引き起こし、収拾の付かない乱闘へと変わってしまった。
 シャマルはスーを抱きかかえて逃げるしかなかった。
その場にいたら自分たちも巻き込まれてどうなるか分からない。
とにかく一旦その場を離れるしかなかった。
 暫くして事態が落ち着いた時そこには何人もの死体が転がっていた。
「スーこれはあなたが招いた事よ妄りにこの力を使えば誰かを救うどころか、無用な争いを生んでしまうの、だからその力は私が良いと言うまで使う事を禁止します」
 そう言って酷く悲しい顔をしたシャマル、スーは激しく落ち込むしかなかった。
シャマル先生を喜ばせようとした事が人を何人も死なせる事態を引き起こしてしまった。
 もうどんなに謝っても死んだ人は生き返りはしない。
スーだって知っている、この力を使っても死んだ命は元に戻ることは無いことぐらい。
 その日の夕方、事の顛末を喋らざるを得ないシャマルだった。
「済みませんでした、私の監督不行届です」
「シャマル先生、アレは一体どう言う事なのかね?
あの力は一体?どうしてあの子があんな事が出来たのかね?」
 全員を代表してマルク先生が尋ねる。
「私もスーちゃんも普通の人間ではないんです。ただちょっと普通でない力があるんです」
「普通でない力か?」
「超能力です」
 与那覇先生だった。
「シャマル先生に何度か見せて頂きました。でもまさかスーがあそこまで力を使いこなせる様になっているとは思わなかったんだです」
 与那覇先生が助け船を出してくれた。
「シャマル先生、何故その力を医療に、人々の役に立てようとはしないのかね?」
「この力は、この力では小さな傷を消す事は出来ても、大きな怪我や重い病気を治す事は出来ないんです。
まして命を救う事なんて出来ない、その程度の力なんです。
それに、スーちゃんには私と同じ失敗を挫折を味わって欲しくなかった。
助けたくても助けられないという絶望を」
「なるほど、それが君が医者を志した理由かね?」
「はい、だから私は医者になろうと北見先生や安田先生に追いつけるぐらいの腕を持った医者になろうとそう思ったんです」
(思ったなんて物じゃない、伝え聞いた尋常成らざる努力も、どんな患者を前にしても逃げないその姿勢もそれだけ辛い過去に向き合っているからこそ出来る事だ。
相当な覚悟がない限りここまで出来る医者になれる事はないだろう?)
 マルク先生はもうそれ以上追求する事はなかった。