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神手物語(ゴッドハンドストーリー)名医の条件102話~EP

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第109話 女神の帰還

「スーちゃんお願いね」
「うん分かったよ、ガメイさん」
 婦長のガメイさんに頼まれてスーはテーブルの上の料理に電磁波を当てる。
 あっという間に料理が熱々になっていく。
そう、魔力変換資質「電磁波」は周波数を変える事で金属だけでなく水の分子やタンパク質も加熱させる事が出来るのだ。
 停電が多く思った様に家電が使えない国にあってもスーがいれば心配なかった。
いつも料理は熱々安全な食事が摂れるのだった。
 まさに一家に一台欲しい能力である。
「スーちゃんがいれば本当に助かるわ」
 能力の無駄遣いな気がするがまあ仕方ないだろう?
それに先生達は今まで料理は絶対にさせて貰えないで居た。
それは指先に怪我があれば手術は絶対に出来ないからだ。
衛生的に良くないし万が一僅かに手元が狂っただけで取り返しの付かない事になる。
 だから料理や大工仕事など絶対に厳禁だったのだ。
それ故、手術に参加しない看護婦が交替で食事を作ってきた。
このチームの場合小さな怪我の心配など無いのだが、
それでも規則は規則と言って絶対にシャマル達に料理をさせてくれなかった。
 それに食事自体現地調達の国もあればレトルト食品の国もあった。
特に衛生状態の悪い国、まともな食料の入らない国ではレトルト食品のお世話になる事が多かった。
それに日本製のレトルト食品は優秀だった。
時々国連が配達してくれるのだ。
 そして今居るのはインドネシア、最後の国だ。
この国でも一部の地域で戦争が続いていてごく最近、その地域が独立したばかりだったりする。
 そう言う関係で国内でもまだ地雷原が多く残り未だに犠牲者が後を絶たない。
 でも、カンボジアほど酷くはなかった。
カンボジアでは毎日の様に地雷の犠牲者が運ばれてきた。
中には足の切断を余儀なくされる患者も数多くいた。
流石にシャマルでもそこまで治す事は不可能だからだ。
 それでも普通なら切断という怪我を治療してみせる事もあった。
普通の医師よりも優れた技術がそれを可能にしていたからだ。
 ベトナムでは未だに残る枯れ葉剤の影響という悪夢を見せられた。
先天的障害は殆ど治療が出来ない。
シャマル達に出来るのは結合している二人を切り離す事だけなのだが、
それとてどちらかの命を諦めなければならない悲しい手術となる事があった。
 これまで見てきた国の内疲弊した貧しい国は何処も戦争の犠牲となった国だった。
(この世界はまだ未熟すぎる、そして何よりも戦争を防ぐ事が出来ないほど
人間の心が荒んでいる、まるでヴェルカ戦争の時の様に……)
 シャマルは戦争の犠牲という人々を見る度にそう言う思いを募らせるのだった。
 彼女はこれまで患者と接する度に、
「あなたは一人じゃない、一緒に頑張ってくれる仲間がいる」と、
「だから仲間を信じて、仲間を愛して頑張りなさい」と説いてきた。
それは女神の教えとして少しずつ疲弊しきった国を救い始めていた。
彼女の教えを心の拠り所に立ち直る国が出始めていたのである。
 シャマルは、患者の命を心を救っただけではなかった。
国その物さえ救っていたのだ。
彼女はまさに女神だった。
そして女神伝説だけが静かに広がっていった。