神手物語(ゴッドハンドストーリー)名医の条件102話~EP
第103話 地獄へのスパイラル
新しい奥義を覚えて一週間、既に夏休みに突入していた。
今日もなのは達は厳しい研修が続いている。
この秋からは実際に生徒を持っての教官となる。
魔法戦を教える事は普通に戦うよりも遙かに難しい。
各個人の弱点を見つけ出しそれを指摘して弱点を克服させる事、魔法の効果的な撃ち方。
各個人の特殊な能力を戦闘でどう生かすか?自分が覚えそれを相手にどう伝えるのか?
毎日体当たりの研修だった。
研修時間が終わるとなのはの個人練習が始まる。
あれだけきつい研修をこなしておいて更にまた練習である。
他の教官が呆れていた。
「大丈夫だよ、いつももっときつい練習をしているから」
なのはは更なる高みを目指して今日も練習に明け暮れる。
「ファーン先生、お願いします」
呼び出されていたのはファーン先生だった。
「奥義無し、魔法無しの格闘戦でお願いします」
そう、通常の技だけでまずファーン先生に勝てなければ到底美由希から一本取るなんて夢のまた夢だった。
シューティングアーツ対御式内、第2ラウンドだった。
他の教官達も見守る中で戦いの火ぶたが斬って落とされる。
開始線で睨み合う二人、
この時既になのははファーン先生の呼吸を読みに入っていた。
「始め!」
その瞬間、マシンガンの様なパンチが織り交ぜる様にキックが飛んでくる。
なのははその全てを捌いてみせる。
この前の時より捌けている。
苦し紛れに回し蹴りを放って距離を取るファーン先生、
「凄い成長力ね、もう私の攻撃が通じなくなってる。でもこんなのはどうかしら?」
またパンチの連打しかし今度はそのパンチがなのはの顔を捉えていた。
2発目を十字受けしたなのはが後ろに飛び退く、フェイントだった。
最初の一発目を打つ瞬間にフェイントを入れてタイミングをずらしてきたのだ。
「今のはやばかったの、でも、もう喰らわない」
また、壮絶な撃ち合いが始まる。
完全に捌き切れている訳じゃないが、それでも一発も貰わないなのは、
ステップの僅かな違いでフェイントかどうかを見分けて対処していた。
そこへ蹴りが来る、しかしそれをスェーしてかわした瞬間なのはの足払いが決まっていた。
倒れたファーン先生になのはが蹴りを入れようとするがそれを転がって逃げ切る、
途中からジャックナイフで飛び上がると上から踵落としの2連発それを読んだなのはが避けざまに、ファーン先生の腕を取っていた。
入身投げだった、これなら受け身は取れない。
いや、正確に言えば受け身を取らせない投げ技だ。
地面に叩き付けた瞬間、腕固めを決めていた。
ここでファーン先生がギブアップ、なのはの勝利だった。
「凄いわね、この前より更に強くなっているわね」
「でもこんなんじゃダメなんです、これじゃあまだお姉ちゃんには勝てない」
「どう言う事かしら?」
そこで始めてなのはは自分の置かれた立場を
残り1年半で美由希から1本取れる様にならないと管理局を去らなければ行けない事を、翠屋を継がなければ行けない事を話した。
「それほどまでにあなたのお姉さんは強いのですね?」
「はい、自分から見ても化け物です」
管理局でも高町家の強さはある程度把握していた。
最強の剣術を使う一族として認識されていた。
「じゃあ、あなたの格闘技は、その御神の剣を習う前段階として習得しなければならない物だと言う事ね?」
「その通りです、お姉ちゃんは格闘技の天才だから、その……未だに指一本触れられなくて……」
それは信じられない一言だった。
ここまで強いなのはが指一本触れられない。
ミッドチルダに於いてその頂点を極めたファーン先生も考えられない化け物だった。
「こうなったら二人以上で相手をしたい所なんだけど……
残念ながらその当てにしていた人たちはもうこの世には居ないの」
「えっ?」
なのはが復帰する少し前の事だった。
シューティングアーツの達人クイント・ナカジマ
当代きっての槍の達人ゼスト・グランガイツは任務の失敗によりこの世を去っていた。
それほどの達人を殺せるほどの強い犯罪者が居る。
そしてこの事件ははやてが少しずつ調べていた。
作品名:神手物語(ゴッドハンドストーリー)名医の条件102話~EP 作家名:酔仙