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神手物語(ゴッドハンドストーリー)名医の条件102話~EP

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 一方シャマルはエチオピアの難民キャンプにいた。
ここも衛生状態は最悪、取り敢えず何本かの井戸が掘られ、
少ないながらも水は確保出来ている。
しかし、問題は治安だった。
 難民達に配る食糧を武装したゲリラ達が奪っていく、時に何人もの人たちが撃たれその命を落としていた。
 酷い時には診療所のテントにさえ銃弾が撃ち込まれた。
マルク先生は一時撤退を考えたがシャマルがそれを突っぱねた。
期待されている以上絶対に逃げる事は出来ない、何があってもやり遂げるとそう言いきった。
 戦争が難民を生み、難民が貧困と飢餓を生む、
そして貧困と飢餓が更なる争いを生む、その争いが更なる戦争を生む。
 そうやって何処まで行っても救いようのない地獄へ向かって落ちていく、
人間は何処まで行っても救いようのない生き物なのかも知れない。
 やりきれない思いを抱えながらそれでも地獄に赴くシャマルだった。
 その日、難民キャンプの診療所に来ていたシャマル、
だがそのすぐ近くで襲撃事件が起きた。
 ジープに乗った3人の男達が食糧を強奪し自動小銃を乱射していた。
何人も撃たれて倒れていく、その銃弾はシャマルの腕をかすめていた。
血が垂れて指から滴り落ちる。
 でも、もう許しておけなかった。
ここで止めないと犠牲者が増えるばかりだ。
 もの凄い魔力が膨れ上がった瞬間、誰かが走り込んできた。
高く飛び上がったその人影はジープの上にいた二人を蹴り飛ばしジープのボンネットを殴りつけていた。
 与那覇先生だった。
 ジープが火を噴いて燃え上がる。
そして爆発、残り一人は難民達に囲まれていた。
もう銃弾も残り少ない逃げる事は出来なかった。
 それでも撃つぞと脅し、何とか逃げようとする。
次の瞬間だった。
一瞬で間合いを詰めた与那覇先生がもの凄い速さの突きを放った。
その一撃は胸の手前で寸止めされている様に見えた。
 次の瞬間、男の胸が大きく陥没し男は目が飛び出し鼻、口、耳から血を吹き出して絶命していた。
 空手の神髄、正拳突きの真の威力だった。
マッハを超える拳が彼の体を打ち抜いていたのだ。
 でも、事態はそれで収まらない、倒れていた二人に難民達が襲いかかる。
彼らは頭を石で潰され、体を引き裂かれていた。
それほどまでに難民達から憎まれていたのだ。
 シャマルは思った、
(憎しみは憎しみしか生まない、この地獄は憎しみを断ち切らない限り何時までも続く)
 のだと……
「シャマル先生大丈夫ですか?」
「ええ、ただのかすり傷です」
「動かないでね、すぐ治すから」
 テントにいたスーが回復魔法を掛けてくれた。
それから、撃たれた人を見て回る。
 5人が死亡し7人が重軽傷を負っていた。
何もない中で診療所のテントの中で手術が始まる。
 軽傷者にはスーが回復魔法を掛けていた。
3人の重傷の内一人はもう手遅れだった。
設備があればなんとか出来たかも知れないが、
ここはテントの中、僅かな医療器具しかない。
 流石にシャマルでも救う事が出来なかった。
残り二人は同時手術、3人の看護婦と与那覇先生がサポートし、
どうにか弾丸を摘出し破れた内臓を縫い合わせ、どうにか手術を成功させた。
 でもシャマルは助けられなかった一人を悔やんだ。
「せめてもう少し設備があったなら助けてあげられたかも知れない」
 シャマルの胸にまた一つ悔しい想いが傷となって刻まれた。