神手物語(ゴッドハンドストーリー)名医の条件102話~EP
次の日だった。
それはいつもより規模の大きな襲撃だった。
難民達を避難させる物のシャマル達は囲まれていた。
テントを10人近くの武装ゲリラに囲まれ既に逃げ出す事が出来なかった。
バリアを張るか?それとも撃って出るか?
そう悩むシャマル、ここには3人の看護婦、スー、与那覇先生がいる。
流石の与那覇先生もこれだけの人数を守りながら戦う事は出来ない。
完全に人質状態、下手をすれば殺される。
いや、もうテントに銃口が向けられていた。
その瞬間だった。
難民達が物陰から石を投げて援護してくれた。
投石に気を取られた瞬間与那覇先生が飛び出す。
目の前にいた二人が超音速(マッハ)拳の餌食になった。
音速の拳の威力を侮っては行けない、その威力はバズーカ砲にも匹敵する。
分かり易く例えるならコルトガバメント45口径、弾丸の発射速度は初速214m/s、それだけの速度で僅か12gの弾丸が発射されただけで車のエンジンにシリンダーブロックに穴を開ける。
因みに音速とは秒速336m/s、恐らく与那覇先生の拳は350m/s程度の速さまで加速されている物と考えられる。
しかも腕だけで5kg以上有る。
コルトガバメントの実に750倍以上の破壊力を持って相手に命中するのである。
そんな物を喰らったらどうなるか?
ご想像通り喰らったら間違いなくあの世行きである。
次々に打ち倒されていくゲリラ達、でも5人目を打ち倒した瞬間だった。
後ろからの一発が与那覇先生の肩を捉えた。
負傷し動きが鈍くなった瞬間、一斉に狙われた。
だが次の瞬間だった。
「お父さんをいじめるなぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁ!」
その瞬間、スーが手から光を放っていた。
その光に飲まれた3人は銃がそれだけでなく身に付けていた金属全てが赤を通り越して白く輝くほど発熱した。
そんな熱を受けたらどうなるか?
肉や皮膚は一瞬で溶けて蒸発し骨があっという間に露出し、それすら灰になっていく。
それだけでなく、マガジン内の薬莢が暴発し彼らの体は半分近く吹き飛んでいた。
「これは魔力変換資質!」
シャマルがついそう声に出したのは彼女も見た事のない魔力変換資質だったからだ。
その力は電気とも炎熱変換とも違う物だった。
強いて言うなら、電気と炎熱の中間的資質、金属のみを加熱させている事から見て、恐らく電磁波だろう?
IHクッキングヒーターの様な原理と言うべきかも知れない。
電磁波で金属を発熱させる。いや電気溶鉱炉の様な能力と言うべきか?
しかも、いままでCクラス程度と思われていた魔力が比べ物にならないほど大きくなっていた。
恐らくAクラス、もしくはAAクラスと思われる位強力な魔力だった。
「これは2段覚醒かクラスチェンジ!」
そう、ごく稀にいる魔力覚醒の仕方、最初にごく弱い魔力で覚醒してその後にもう一度本来の魔力が覚醒する覚醒の仕方。
または突然強力な魔力を身に付けてしまいこれまでよりも何段か飛び越えて階級を上げる場合、それがクラスチェンジ、スーの場合2段覚醒の可能性が高い。
残り二人がスーに銃を向けた瞬間だった。
彼らの回りをきらきら光る物が舞った。
次の瞬間、彼らは手足を切り飛ばされていた。
シャマルがクラールヴィントのセンサーワイヤーを振り抜いていた。
こうしてどうにか窮地を脱する事が出来た。
与那覇先生はすぐにスーが回復魔法を掛けていた。
どうやら大したことはなかった様だ。
生きていた二人のゲリラは、軍に引き渡されて、
アジトの場所を吐かされる事になった。
アジトは国境の向こうだった。
ソマリアにアジトがあっては手も足も出せなかった。
しかし、その夜の事だった。
国境の向こうに天空から一筋の光が落ちた瞬間、核爆発の様な大爆発が起きていた。
衛星軌道からの攻撃、はやてだ、フレースヴェルグを一発に圧縮して衛星軌道から砲撃したのだ。
実は直前にはやてとシャマルはメールを交わしていた。
そこで今日あった事の顛末を報告していたのだ。
許されざる者の存在を知ったはやては行動が早かった。
リィンを融合するとアースラへと転送、そこからアースラの照準システムを使って、超長距離の砲撃を敢行したのだ。
その日以来、ゲリラの姿はもう見られなくなった。
大爆発により、国境に巨大な峡谷が出来ていた。
もうこれで国境を越えてくる事は不可能になっていた。
それからという物、難民達はあの爆発を神の怒りと呼ぶ様になった。
そしてシャマルとスーは、その怒りを神罰をもたらす神として恐れられ敬われる存在となったのだった。
作品名:神手物語(ゴッドハンドストーリー)名医の条件102話~EP 作家名:酔仙