神手物語(ゴッドハンドストーリー)名医の条件102話~EP
もうすぐお盆という頃、恭也が帰ってきた。
「何だなのは、まだ水鏡(みかがみ)を教えて貰ってないのか?」
「水鏡?」
そう、それは奥義の一つだった。
「技と言うより術だな、これが出来れば相当に戦いが楽になるし、
その上の奥義を覚える為には必須の奥義だし、今覚えても損はないぞ?」
どうやら奥義を教えて貰えそうだ。
「なのは撃ち込んでこい」
なのはが、百重刺しの打撃を繰り出す物の、
寸分違わず同じ技で同じ場所へ攻撃を返され相殺される。
まるで鏡に攻撃を撃ち込んでいる感じだ。
完全に技をコピーされている。
しかも、ただのコピーではない。
コピーならどうしても技を見てから真似る為、タイムラグが生じオリジナルには勝てない。
だがこの奥義は違う。
タイムラグ無しにコピーし撃ち込んでくる。
今度は蹴りを出してみるがダメだった。
同じ技を鏡が映し出す様に返され相殺される。
なら奥義を使ってみた。
無拍子だった、無拍子からの寸勁、しかし、それすらも鏡の如く返されていた。
「これが奥義、水鏡壱式だ、因みに弐式もある」
やり方は、呼吸、気配、そして相手の目を見て何を考えているかを読み取る事だった。
そう、気配と思考は技を出すより早く肉体に伝わる。
それを読み取ってコピーしている為タイムラグが生じ無いのだ。
弐式では同じ技を返すのではなく相手の技に対応した技で相手を打ち倒すのだという。
練習方法は吐納と同じだった。
「まあ、2~3ヶ月あれば身に付くだろう?それまで練習する事だ。
それに水鏡が出来る様になったらその上の盤上繰手が出来る様になる」
「盤上繰手ってどんな奥義?」
「まあぶっちゃけた話、戦う前から相手の行動を読み取り戦いを支配する事、
つまり相手に気付かれることなく相手の行動を操る術だ」
将棋のプロ棋士が相手の攻め手を操る様に、
相手の攻め手を操ってしまう、しかも相手に気付かれることなく……
これが出来れば、まず負ける事はないのだという。
これが、なのはが美由希に勝てない理由だった。
始めから操られていたのだ。
盤上繰手にも返し方はあった。
目を閉じて心眼だけで戦うか思考と肉体を切り離して間違った情報を読み取らせるかである。
今までなのは達は、一撃の直前を呼吸とステップで読み取りそれがどんな技なのか判断してきた。
しかし今度の奥義は気配と思考を加えて、どんな技がどう言う順番でどの様に来るのかを読み取るのである。
とてつもなく難しいが出来る様になればほぼ最強になれる奥義だった。
作品名:神手物語(ゴッドハンドストーリー)名医の条件102話~EP 作家名:酔仙