魔法少女リリカルなのはA’s〜孤高の改造人間と夜天の主〜
第六話 人食いサラセニアン前篇
それは、小さな出会いだった・・・
主はやてと共に出会った、一人の男・・・
その男は五体を切り刻まれ、骨を鋼へと変えられた・・・
筋を、脈を、肉を、毛皮を、全て強靭なものに作り変えられ・・・
その体は、兵器に成り果てた・・・
だが、男には、魂が残った・・・
組織の名は、ショッカー・・・
そして、孤高の改造人間・・・
仮面ライダー・・・!
魔法少女リリカルなのはA's~孤高の改造人間と夜天の主~
始まります・・・
*
AM5:30 八神家 シグナムの部屋
「・・・ん?」
ふと、シグナムは一階から聞こえてくる機械をいじる音で目が覚めた。音は庭から聞こえているようだ。
シグナムは体を起こすと、上にジャージを羽織り、部屋から出た。
一階に降りたシグナムは、キッチンの冷蔵庫を開けて、牛乳をとって自分のマグカップに注いだ。それを飲むと、シグナムはリビングの窓に目をやった。そこには、サイクロンを整備している本郷がいた。
シグナムは本郷に近づくと、声をかけた。
「こんな朝早くにオートバイの整備とは、戦士らしくないな」
シグナムの声を聴いた本郷は、シグナムに目をやると、少し微笑みながら返事をした。
「別に僕は戦士ではない。それに、サイクロンはいざという時のために必要だから、こういった事もしなければいけないしね」
その言葉にシグナムは、少し微笑みながら言った。
「確かに、そうだな」
その言葉を聞くと、本郷は手に持っていたスパナを工具箱にしまい、横に置いていたタオルで顔を拭いた。
*
ショッカー海鳴支部
「この改造人間用のサンプル体の少なさは何!?」
暗黒魔導師は、手に持っている書類を見ながら怒鳴った。そこに書かれていたのは、改造人間製造用のサンプル体の量を示していた。
「申し訳ございません!何分良いサンプルが無いもので・・・」
「愚か者!それを見つけるのが貴様らの役目でしょ!」
暗黒魔導師は、その理由を説明していた戦闘員を怒鳴り散らした。その時、モニュメントに埋め込まれた電球が点滅を始めた。
『暗黒魔導師よ・・・』
「!首領!!」
暗黒魔導師は、首領の声を聴くと、モニュメントの前に膝をついた。それに後ろの戦闘員も続いた。
『暗黒魔導師よ・・・直ちに再生サラセニアンを使い、改造人間のサンプルになる人間を採取せよ。そして闇の書とその主を手中に収めるのだ!』
「ははっ!直ちに!」
そう言うと、暗黒魔導師を立ち上がり、鞭を左側の扉に向けた。
すると、扉が開き、そこから緑色の怪人が現れた!
「エ゛エ゛エ゛エ゛エ゛エ゛!」
*
数日後 八神家 リビング
≪次のニュースです。海鳴市営植物園で、ここ数日間で来援客が六人蒸発する事件が起きました。警察は誘拐事件とみて調査を進めていますが、手掛かりは見つかってません。繰り返し・・・≫
「これは・・・」
シグナムは、ニュースを見てそう呟いた。その周りには、はやて達がテーブルに座っていた。
「この事件ってもしかしてショッカーてのが絡んでるのか?」
ヴィータは、首を傾げながら、本郷の方を向いた。本郷は、真剣な目で答えた。
「まだ決まった訳ではないが、否定できないな。(この手口、まさか・・・)」
本郷は一連の事件にある事を思い出した。それは、まだ本郷がこの世界に来る前にあった戦いを思い出した。
かつて、ショッカーは改造人間用の人間を確保する為に、怪人サラセニアンを使って、植物園に来た人を拉致していた。しかし、その作戦は自分がサラセニアンを倒すことによって阻止した。
その事件と、今回の蒸発事件の手口が似ているのだ。一体、ショッカーは何を企んでいるんだ?そう思っていた、その時
「猛兄!」
「!?」
不意にはやてから声をかけられた。本郷は突然だったので、少し驚いた。
「どないしたんや猛兄?なんだか顔が怖かったけど・・・」
はやては、本郷の顔を見て少し不思議に思った。確かにあの一件で自分と闇の書がショッカーに狙われる事が分かり、本郷がそのショッカーと戦う仮面ライダーであることを知ったが、それでも一ヶ月間、自分の兄として、家族として接してきた人なのだから・・・
「嫌、何でも無いよはやて」
本郷は、はやてを心配させないために、笑顔で答えた。そう、もう自分は孤独では無い、ともに戦ってくれる仲間がいる。理解してくれる家族がいるのだから・・・
そんな本郷を見たシグナムは、真剣な顔で本郷に話しかけた。
「・・・それで、どうする?本郷」
シグナムの問いに本郷は、冷静に答えた。
「そうだな。まずはその植物園を調査してみよう。シグナムは俺と一緒に現場で調べよう」
「分かった」
シグナムは首を縦に振った。
「シャマルさんはパソコンで出来るだけ植物園の内部の情報を調べてください」
「分かりました」
シャマルは本郷に返事を返した。
「ヴィータちゃんとザフィーラははやてと一緒に留守番だ」
「おう」
「承知した」
ヴィータとザフィーラの返事を聞くと、本郷ははやてに目をやると、はやてと目線が一緒になるくらいの高さまでしゃがむと、安心させるように言った。
「それじゃぁ、行ってくるよ。はやて」
それを聞いたはやては、若干涙目になりながら、返事をした。
「うん・・・いってらっしゃい・・・」
それを聞いた本郷は、シグナムと共に庭に置いてあるサイクロンに向かった。
改造人間本郷猛は、改造人間としての悲しみを背負いつつも、ショッカーとの戦いに、命を懸けるのであった!
*
植物園入り口前
「ここだな」
「ああ、間違いない。行くぞ」
本郷とシグナムはサイクロンから降りると、植物園に入っていった。だが、彼らは知らない。すでにそこには、同じ目的で来た先客がいたことを…
*
植物園内
この植物園は、主に赤道直下又は赤道近辺の国に生息している熱帯植物を展示している。近辺の人からは、不気味で怖いといった苦情もあるが、国内有数の熱帯植物管理システムを初めて使った場所なのだ。そのシステムを提供したのは、大企業の月村コンツェルンである。そんな植物園におきた謎の怪奇事件。一体、何者の仕業なのだろうか?
植物園を歩く二人の青年。一人は女性で、赤いヘアバンドをした短い金髪に蒼い眼をしているので、外国人である事が分かる。もう一人は男性で、片目が隠れるほど長い栗毛の前髪に茶色の瞳から、日本人である事が分かる。二人は、まるで何かを探るように周りを見ていた。
「どうしてこんな場所で人が蒸発をしたんだ?フランソワーズ。そっちは?」
栗毛の男性は、首を傾げながら女性の方を向いた。“フランソワーズ”と呼ばれた女性は耳を澄まして周りの音を聞いていた。
「いいえ。こっちもダメ。ジョー、もう少し奥に行ってみましょう」
女性はそう言うと、奥へと進んでいった。“ジョー”と呼ばれた男性も、それに続いた。
*
その頃、本郷とシグナムは
「よし、二手に別れて調査しよう」
「分かった」
そう言うと、本郷は右の通路を、シグナムは左の通路に向かおうとした、その時!