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たとえばこんな間桐の話の蛇足の話(前)

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 しかし僕と桜と士郎が弓道部って、やっぱり藤村先生の影響だよなー。まぁ、その事に関しては感謝こそすれ、って感じだけどさ。
 ………………何で僕が副部長……。めんどい。
 余生を生きてる僕に何を背負わせてんだよ全く。
「そういえば、一成はまた仕事かー。それで生徒会室使えなくなったし」
「ああ、大変だな、あいつも。生徒会室使えないのって微妙に不便だよな。茶も無いし。……そうだ、聞きたい事あったんだよなー」
「ん?何?」
「桜の式で、白無垢も着ようぜって事になったんだけどさー、やっぱり教会は基本ドレスだろ?」
「え、雁夜おじさんとの式だろ?高校卒業してからじゃないのか?」
「まぁそうだったんだけどさ。籍はもう入れたんだし、いつでもよくね?って感じになっててさー。何にしても、情報は集めときたいしな。まぁ、細かい所は親父がやるだろうけど」
「あー、張り切ってたもんなぁ、昔から。でも一成に何聞くんだよ。あいつ、そういうの詳しいか?」
「いや、わからん。寺関係だから一応聞いておこうと思っただけだし。あんまり期待してない」
「なんかひでえ」
 事実なんだから仕方ない。
 柳洞一成。寺の息子で生徒会長。まぁ、友人だ。
 良い奴ではあるけど、そっち方面は不得手だろうからなー。
「それにしても、このままいけば高校卒業と同時に結婚かぁ……。相手が相手だから別に何も変わらないだろーけど、そうすると慎二はどうするんだ?」
「何が?」
「いや、だから相手だよ、相手。……俺が言う事でもないけどさ」
「……あー……」
 まぁ、兄だからな。妹に先越されるのはアレか。
 でも別に、そういうの欲しいと思った事ないんだよな……。めんどいし。
「じゃあ士郎が嫁に来いよ」
「なんでさ」
 実際、士郎が一番近い他人だから仕方ない。
 妹にそういう話題振られた時に士郎の所へ避難して混ぜっ返すのだってそんな理由だ。
 下手に女子に振ると後々めんどいし。
 一成だと説教に移行するし。
「他にアテがないから仕方ないな」
「む……えーと、遠坂とか」
「遠坂凛とは友人だよ。大体桜の実の姉だぞ?似非優雅と関わるのも御免だ」
「慎二は優雅さんに厳しいなぁ」
 士郎が苦笑してそう言う。
 ……こいつ、もしかして似非優雅野郎の名前が『優雅』だと思ってるんじゃ……。
 まぁいいか。
「大体、僕の今は余生だからなぁ……。あんまり先の事考えてないんだよなー」
「またそういう……」
 士郎がちょっと怒った様に口を開くが、押し黙る。
 間桐の色々、アインツベルン関係、魔術やら魔術師やら、それなりに話してあるから、士郎なりに思う所もあるんだろう。
 ……ああ、本当に。
 いつでも死ねる僕が、何で今も生きているのか。
「……慎二っ」
「うん?」
 何か必死な顔で僕の名を呼ぶ親友に、首を傾げる。
 ……なんだろう?
 余生余生言うから心配してるのか。でも余生だからなぁ。
「……小学生の時、俺の拙い料理食べて、美味いって言ったよな」
「……うん」
 何の話だ。いや、事実だけど。
 あの頃はこいつも酷い状態だった。
 自分以外の家族が死んで、自分も酷い怪我をして。
 記憶も混濁して衛宮家に引き取られる以前の事は殆ど覚えていないとか……。
 でもあの家の人達のお陰で立ち直って。……それがメシマズ養母の飯が食えないから一念発起してってのがアレだが。
 そして引き合わされた時に食べたのがこいつの飯で。
 ……いや、本当に美味かったから、そう言っただけなんだけど。そういえば、こいつ喜んでたなー。
「今も、俺の料理好きだよな」
「好きだけど」
 どんどん上達していったからな。桜と競う様にして、遠坂凛とも張り合う様にして。
 考えてみると、僕の周りメシウマ多いな。
 そんな事をつらつら考えている僕に、士郎は目付きを鋭くさせて。
「なら、勝手に死ぬな。これからも作ってやるから、ちゃんと生きて、余生だなんだ言ってないで、有難く、そして食材に対して感謝して食べろ!!」
 びしいっ、と指を突きつけて。
 そう言い放つ親友に、僕は目を瞬かせる。
 ………ええと。これは、つまり。
「ぶふっ」
「何で噴いた!?」
 そりゃ噴くだろう。まず食に直結させるその思考回路、正に主夫だなぁ、お前は。
「……あーはいはい。わかったよ。余生だ何だ言ってないで、ちゃんと生きるよ」
 笑いを含んだままの僕の言葉に、士郎は少々胡乱げに睨んできたが、諦めた様に息を吐いて。
「……今度、新作食わせてやるよ」
「そりゃどーも」
 ……そうだな。
 僕は、生きる事を諦めていた人間だったけれど。
 今は生きている。今も生きている。爺の脅威も消え去って、好きな様に生きられて、僕なりに楽しんでいる。
 ……あの時に僕はもう、一度生を諦めてしまったから。これが余生である事に変わりは無いけれど、僕も間桐だ。
 親父も叔父さんも桜も、皆幸せに笑っているのに、僕だけこのまんまとかダサすぎるだろう。
 別に死にたい訳じゃないんだから、そう心配するなよ、士郎。
 僕は間桐だ。蟲共に嬲られ、陵辱され、蹂躙され、死に掛けて、それでも生き延びた間桐の男だ。
 今更何にも負けないし、負けられない。
 余生で良い。構わない。これはこれで、強みに他ならないのだから。
 ……さて、僕はこれからどう生きていこうか。
 僕は笑みさえ浮かべながら、これからを考え始めた。



 好きなものは、家族。それと、桜の作ったご飯と士郎の作ったご飯。
 小学生の時に何かの作文でそう書いた彼のそれは。
 いつまでも変わらずに、そしてきっと。彼の好きなものは、これからの生の中でまた増えていくのだろう。