たとえばこんな間桐の話の蛇足の話(後)
師のうっかりと暴走に心躍る日々が続けば、その最後の手段に及ぶ事も無いのだし。
自分は破綻者だが、父も結構な破綻者だ。雁夜も魔術師である師も、みんなみんな。
だからもう開き直った。居直った。そんな自分を受け入れてくれる人々のもとで、綺礼は自分を認めたのだ。
正しくあれと。そう思っていた己はもう遥か彼方。
だが、それでいい。
父を手に掛けたならば、その時。
自分はそんな自分に絶望しながら、嗤いながら己も殺そうと。
そう、決めたのだから。
……まぁ、娘一人を置いて逝くのも何だから、出来るだけそうならない様にはするつもりだが。
己を愛して、そして己の為に死んでくれた妻を思い出す。
あの時に吹っ切れてしまっていれば。
そう思う事もあるのだけれど。
……きっと死んだら、会いにいくから、それまでは。
「……土産話を、待ち侘びていろ」
きっと彼女は、自分の禍々しい話でも、微笑って聞いてくれるだろうから。
そして綺礼は、歪んだ笑みを浮かべつつ。
愉しそうに、生きていく。
作品名:たとえばこんな間桐の話の蛇足の話(後) 作家名:柳野 雫