必殺仕事人 in ヴォルケンリッター 第6話
その先では、ザフィーラが困っていた。
ここは、地上本部参事官エルヴェ・ラロック准将の屋敷の前だったのだ。
流石にはやてでも、いきなり乗り込む訳にはいかなかった。
仕方なく、一旦退却し、作戦を練り直すしかなかった。
自宅のパソコンで、メモリーチップを開くと、麻薬の密売実態が記録されていた。
犯人はやはり、ラロック准将だった。
彼が、ヤクザを使って麻薬を密輸し、売人を使って売りさばいていたのだ。
はやては、メモリーチップをいくつかコピーすると、一つをフェイトに、一つを本局の刑事課に、更にもう一つを108部隊に送りつけた。
本物は、自宅に保管しておいた。
「さあ、行くよ、シグナム!あの子の敵討ちや、きっちり逮捕するで」
シグナムとザフィーラを伴って、はやては准将の屋敷に乗り込んだ。
逮捕状を見せ、中に入ろうとすると、いきなり魔力弾が飛んできた。
だが、はやて達には通用しない。
恐ろしく頑丈なバリアが、魔力弾を簡単にはじき返していた。
そう、騎士甲冑を身に纏ったはやては、とてつもなく防御力が高いのだ。
「シグナム、あいつを逮捕や」
剣を抜いたシグナムが、斬りかかる。
奇しくも相手も同じ剣のデバイスだった。
ただ相手は、片手で剣を、もう片手で魔法を撃ってくるタイプだった。
非常にやりにくい相手だ、剣を受け止めた所に、魔法を撃ち込まれる。
シグナムも苦戦を強いられた。
こう言う時は、攻撃こそ最大の防御である。
「紫電一閃!」
シグナムの打ち込みは非常に重い、とても片手で受け止められる物ではなかった。
剣を打ち落とされて、そこで勝負があったかに見えた。
「そこまでだ諸君!」
二階のバルコニーに姿を現したのは、准将だった。
「今すぐこの屋敷から出て行って貰おう、でないとこうだ」
何人かの男達が子供を抱えていた。
その内の一人を、いきなり射殺したのだ。
「何て事するんや、この人殺しが!」
「おや?聞こえなかったのか?出て行けと言ったんだ、
それにこんな実験動物いくら殺した所で大した罪にもならんよ?
こいつらは、初めから存在していないんだからな」
「……ゆるさん、ゆるさんのや!」
「おっと、この場で砲撃でもするのかね?すればクラナガンの市民を巻き込むよ」
その瞬間だった、はやてはシュベルトクロイツで、准将に斬りかかっていた。
拳銃で反撃する物の、全てバリアに弾かれた。
はやての斬撃が、准将の手をかすめた。
「終わりや、あんたぁは今死んだ」
「何を言ってるんだね?」
そう言い終わらない内だった。
ビシッ
傷口から石になり始めたのだ。
あっという間に石像と化した准将を、はやては蹴り倒した。
ボコッという音と共に、彼は砕けて散った。
「シグナム!」
シグナムは、あの魔導師を斬り殺していた。
そのまま二人は、屋敷内の男達を次々と殺していった。
人質を解放する為だった。
そこへ、ザフィーラも加わる、屋敷内はとてつもない惨劇の地獄と化した。
最後の一人を石に替えた時、屋敷は包囲されていた。
包囲していたのは、レティ提督の率いる精鋭部隊だった。
この時レティはフェイトの上司でもあったのだ。
はやて達は、レティの前に自首した。
「成り行きとはいえ、犯人達を殺害しました」
だがレティは、彼女を咎めようとはしなかった。
「この一件は私が預かる」
そう言ったきり、はやて達に何のお咎めも処分もなかったのである。
作品名:必殺仕事人 in ヴォルケンリッター 第6話 作家名:酔仙