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風香の手帖

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 二人は子供たちのところへ戻った。
「とーちゃん、はなびきれいだった! みてたか?」
「ああ、見てたよ」
「みうらちゃんと恵那は楽しかった?」
「楽しかったー」
「日記に書けるな」
「ジャンボ悪いな。いつもよつばを見てもらって」
「礼は、風香ちゃんにエプロン着てもらって、うちの花屋手伝ってもらえればいいから」
「あっ、お花屋さんやりたーい!」
「いつでも来ていいぞ」
「バイト代出ますよね」
「相変わらず、しっかりしてんなー」
そして一行は帰っていった。

 帰りの車でも大騒ぎであった。
「とーちゃんこれとった!」
よつばは小岩井に水ヨーヨーをやって見せようとしたが、ゴムが指からはずれ、小岩井の顔を直撃し、そこら中が水浸しになった。
ジャンボが嘆く。
「ああー! よつば勘弁してくれー」
「形あるものはいつか壊れる。私今いいこと言いましたよ」
「前取った金魚ねえ、すっごく大きくなったから、近くの池に放しちゃった」
「何で屋台の焼きそばっておいしいんだろうな」

 そしていつものようにみうらを先に降ろし、一行は無事帰ってきた。
「えなー、おもしろかったなー」
「やっぱり花火はきれいだよねー」
「風香ちゃんは楽しかった?」
「久しぶりだったから、すごい楽しかった」
「風香ちゃん、何が久しぶりだったんだ?」
ジャンボが突っ込む。
「それは…… 花火に決まってるじゃないですか!」
だが、風香の顔は赤くなっている。
これ以上いるとまたからかわれそうなので、風香は帰ることにした。
「恵那、帰ろう。それじゃおやすみなさーい」
「さよならー」
「おー、えなー、あしたなー」
「さて、俺も帰るわ」
「ジャンボもかえるか」
「ああ、よつばも早く寝ろよ」
「うん!」
「それじゃ、またな。今日はいろいろ助かったよ」
「じゃあな。あさぎさんがいるときは絶対呼べよ!」
ジャンボは車で帰っていった。

 一方風香は着替えて自室にいた。
「あー、洋服は楽だー。でも浴衣着てほめられるとうれしいもんねー」
風香は今日のことを思い出しながら、手帳に書き込む。
「小岩井さんて本当にえっちなんだからー。でも大人の男の人ってあんなもんなのかな。それともやっぱり私が子供なのかな。小岩井さん、えっちじゃないときはやさしいんだけどなぁ」
そしてふと考える。
小岩井に言われた、いつか訪れる自分が大人になるための儀式。
その時が来るのが怖くもあり、また待ち遠しくもあった。

「でも今日は久しぶりに二人きりでうれしかったな。もっと甘えちゃえばよかった。そういえば小岩井さんて、私に甘えたりするのかな」
風香は小岩井に膝枕しているところを想像して見る。
「うん、別におかしくない。でもやっぱり私が甘えたいし。小岩井さんに髪の毛撫でてもらったの気持ち良かったな。また撫でてもらおうっと」

 風香は手帳を閉じ、ベッドへ潜り込む。
今日小岩井と過ごした時間が思い出される。
風香は小岩井の顔を思い浮かべてみた。
だが、なぜか細部が思い出せない。
そのことにもどかしさを感じながら、今度会ったら忘れないように、小岩井の顔をよく見ておこうと思う風香であった。

作品名:風香の手帖 作家名:malta