必殺仕事人 in ヴォルケンリッター 特別読切
数日後の夕方、クラナガン中央駅西出口付近のチラシ配布用の棚を、若い女が漁っていた。
ネットでようやく見つけたラルゴへの依頼の方法、それはこの棚の中に封筒があり、その指示に従えという物だった。
確かにあった、チラシの間に封筒が……中には紙が一枚、指示が書かれていた。
「西口を出たら左に曲がって三つ目の植え込みの中に封筒がある」
また封筒がある。
今度は地図だった、付近の簡略な地図に点線で道順と印が一つ、どおやら次の指示があるらしい。
目的地は路地を入った所だった。
行き止まりの塀に打たれた釘に、使い捨ての通信端末が掛かっている。
彼女がそれを手に取ると、電話が掛かってくる。
「今あんたは、俺のスコープの中にいる」
ヴォイスチェンジャーを通した不気味な声がそう告げた。
「ラルゴなの?あなたがラルゴなのね」
「そうだ」
「あなたに依頼したい事があるの」
「依頼とは?」
「私の敵を取って欲しいの」
「どういう事だ?」
「私は、管理局の執務官です、これからある男を逮捕に行くのだけれど、もし、失敗したらその時は私の敵を取って下さい」
「お前死ぬつもりか?」
「死ぬつもりはないわ、でも、あいつのガードをしている奴が化け物なのよ、どんなに殺しても死なない化け物、逃げるだけで精一杯だった」
「不死身の化け物だと?」
「そう、彼の会社が売り物にしている人間兵器、そんなに数は多くないのだけれど、極めてたちが悪いわ」
「ターゲットは誰だ?」
「E&Mバイオテック社社長タラブーゾ、専務取締役ソライア、兵器部門の営業課長ガルベネの3人よ」
「馬鹿な、あそこはただの製薬メーカーでそんな兵器とは関係がないだろう、それに兵器と関係があった部門は……」
「知ってるわ、仕事人に潰されたのよねぇ?
でも、その研究データを他の所へ持ち出していたのよ、それで別の世界で人間兵器を作っているわ、
それにあの会社は、他の2カ所の世界で、細菌兵器と毒ガス兵器まで製造しているの、尤もその2カ所は私が潰したけれど……
先週、本社をガサ入れをしたけれど、綺麗に証拠を隠滅された後だったわ」
「なるほど、よく判った、受けよう、ただし金は先払いだ、指定口座を教える」
その口座は、ネットバンキングの使い捨て口座だった。
振り込んだ瞬間、口座はどこかへ消えてしまった。
こうして簡単には足が着かない様にしているのだ。
「しかしなあ、討ち漏らしがあったとは……」
「そう言う事で頼むよ、姉(あね)さん」
「しかし、本当に下調べだけでいいんやね?」
「ああ、俺の受けた仕事だから」
はやての調査が進む、だが1週間後、彼に仕事を依頼したクリスティン=メルロー執務官は変わり果てた姿で見つかった。
そのあまりに酷い殺され方に、誰もが怒りを感じずには居られなかった。
「メルロー執務官は、弟がおったそうや、両親が離婚して弟と離ればなれになった。
弟を連れて行った父親も8ヶ月前に事故死したそうや、そしてその弟は、児童保護施設からあの研究所に送られて……」
「何てこった、それじゃあ弟の敵討ちもか?」
「そう言う事やね」
「あいつらは、三日後、新製品の発表レセプションでクラナガンにやってくる、会場はクラナガン中央グランドホテルの8階や、
それとレティ提督から、あんたのガードと、その不死身の化け物を捕獲する様に依頼された、こっちの仕事は好きにやらせて貰うわ」
「ああ、好きにやってくれ」
作品名:必殺仕事人 in ヴォルケンリッター 特別読切 作家名:酔仙