必殺仕事人 in ヴォルケンリッター 特別読切
三日後、レセプション会場
「えー当社の新製品の抗ガン剤について……」
長ったらしい説明が続いている。
その頃、会場を直接狙える3カ所にビルには、黒服サングラスの男達が何人も張り込んでいた。
こいつら全員、人間兵器である。
一方、ラルゴは正面のビルがブラインドとなる位置のビルの8階にいた。
この位置から、正面のビルを見ると、1カ所だけ、会場を見通せる窓があった。
そう、ここから正面のビルのガラスを抜いて狙撃をするのである。
距離にしておよそ400m彼にとってそんなに難しい距離ではない。
準備した銃は、ワルサーWA2000、5.56mm NATO 弾仕様である。
(うんちく:ワルサーWA2000は、セミオートでありながらボルトアクション並の命中精度を誇る狙撃銃である)
スコープの先では、丁度彼らの挨拶が終わり、三人が主賓席に着いていた。
机の上に二脚を開いて銃を固定すると、まず社長からトリガーを引く、パーン、パーン、パーン、パーン、パーン、パーン
一人当たり2発ずつ正確に放たれた弾丸は、彼らの額に全て命中していた。
僅か2秒ほどの出来事だった。
彼らは、油断していたのであろう、逃げる事も、避けて身を隠す間もなく、あっという間に殺された。
だが、それだけでは終わらなかった。
彼らが連れてきた人間兵器が、コントロールを失って変身し暴れ始めたのだ。
人間兵器達はそんなに頭が良くない様だ、今回言い渡されたのは、主人を守る事、3カ所のビルのいずれかにラルゴが現れたら殺す事、
この二つだけだった、そのため次に何をしたらよいか判らなくなって適当に暴れ始めたのだ。
一度はその場を離脱しようとしたラルゴだが、会場内にいた人間兵器が他の客に手を出し始めたのを見て狙撃を続ける。
この人間兵器は、非常に厄介だった。
それまでの人の姿から、ひょろ長いマネキンの様な姿に変わる、それだけでなく身長も2.5m 程になった。
真っ白なその姿に小さな黒い羽が生えていた。
大きい割りに意外と素早く、腕力、握力が普通じゃあない。
そう、彼女は、クリスティン=メルロー執務官は、殴られて動けなくなった所を体中握り潰されて死んだのだ。
まさに化け物だった。
レセプション会場は、地獄絵図に代わりつつあった。
その上、狙撃されても彼らは死なないのだ。
頭に弾丸を撃ち込まれようが、心臓を打ち抜かれようが死なない、その傷さえ見ている間にふさがっていく。
業を煮やしたラルゴがフォローポイント弾を撃ち込んでみるが、効き目は薄かった。
頭を半分吹っ飛ばされて、動きは多少鈍くなった物の、飛び散った頭部を拾い集めると、それがくっついて再生を始める。
このままでは、一般人の犠牲が増えるだけだった。
その時はやてから通信が入る。
「このままでは不味い、一般人の犠牲は出したくないし、顔を見られる訳にもいかへん、どうしよう?」
「俺に考えがあります、もう少ししたら指示を出しますんで、それに従って下さい、奴らを廃棄都市区画の南ブロックに誘導します」
言うが早いか、ライフルをトランクケースにしまい込むと、エレベータでビルを下りていく、
玄関近くに止めてあった乗用車から、また通信を入れる。
「今からホテルの前を通過して廃棄都市区画の方へ逃げますから、奴らに俺を追いかける様指示を出してみて下さい、多分それで追いかけて来るはずです。
それから、もし追いつかれそうになったら、上空からの援護をお願いします」
乗用車は、2ブロック先から左に曲がるとホテルの前を通過した。
「ラルゴが逃げたぞ!追え!」
そう叫んだのは、ザフィーラだった。
その声に反応して、会場にいた7体の内、再生中の1体を残して6体が地上に飛び降りてくる。
他のビルにいた奴らも、それに合流した。
全部で24体、かなりの早さで追いかけて来る。
そいつらを引き連れて、彼は逃げた。
はやて達が、その後ろを上空から追いかけていった。
作品名:必殺仕事人 in ヴォルケンリッター 特別読切 作家名:酔仙