必殺仕事人 in ヴォルケンリッター 特別読切
一方、廃棄都市区画
「紫電一閃!」
シグナムが斬りつけるが、その剣が途中で止まる。
「何て硬い体をしてる」
その上、斬られた所がすぐに塞がっていく。
「ラケーテンハンマー」
その一撃をモロに受けても相手は倒れない。
その上、傷もすぐに塞がっていく。
「畜生、何て硬い皮膚をしてやがる、天狼拳が使えない」
「灰になりな!」
だが、その炎も通用しなかった。
「これならどおや」
シュベルトクロイツで斬り付けられた一体が石になって砕けた。
これは効くらしい。
「ギガントシュトラーク!」
ぺちゃんこに潰された1体も爆発して砕け散った。
ラルゴは、車から新しい銃を取り出していた。
ショットガンブルドッグ、ストックを外してピストルグリップを付けた取り回し重視のショットガンである。
弾丸はスラッグ弾、一撃で自動車のエンジンさえぶち抜く。
目の前の1体に一撃お見舞いする。
その1体は、胸に大きな穴が空いて動きを止めた。
どおやら再生に時間がかかる様だ。
その隙にリュックとショットガンを持ってその場を離れる。
リュックの中身は、スラッグ弾とマガジンが10個、左脇のホルスターに入った拳銃用である。
先ほど大穴を開けられた1体に、リィンが凍結魔法をかける。
完全に凍結したそれは、砕け散りはしなかったが、再生は止まり、完全に活動を停止した。
「はやてちゃん、1体確保ですぅ」
「ようやったでリィン」
それでも、まだ21体も残っている。
ラルゴは逃げながら考えていた、奴らの弱点を……
石化魔法は通じる、一定以上のダメージを受けると完全に再生するまで動きを止める、完全に潰されれば自爆して死ぬ。
という事は、体のどこかにコントロールユニットが有るはず、それを壊せば恐らく殺せるだろうと言うのが彼の結論だった。
その間に、はやてとヴィータがそれぞれ1体ずつ仕留めていた。
さっきは頭も胸もダメだった。
今度は、腹をぶち抜いてみた。
またしても動きを止める。
だが、彼は見逃さなかった、土手っ腹に空いた大きな穴の一番下の方、黄色く光る宝石の様な物が少しだけ見えていた。
すかさずその宝石に向けてもう一発放つ、今度は体にヒビが入り、爆発して砕け散った。
コントロールユニットは間違いなくその宝石だった。
「下っ腹だ!へその5センチ下を狙え!」
そう叫ぶ。
ヴィータは、ギガントシュトラークで、はやては石化で、シグナムはそのまま剣でへその下を突き刺す。
ラルゴはショットガンで下っ腹をぶち抜く。
それから10分、全てのマネキンは木っ端微塵に砕かれた。
「なるほど、これがその1体ですか……」
ここは第4技術開発局、マリエル技官、はやて、レティ提督、リィンが見守る中で冷凍になった1体が分析されていた。
「やはり、人間の体をベースに作り替えられていますね、一体誰がこんな酷い事を……」
「クレーテン博士や、あの博士がしとった研究成果がこれや、酷いもんやで」
「八神特別捜査官、フェイト執務官と共に今すぐE&Mバイオテック社本社及び関係先をガサ入れしなさい、人選はそちらに任せます」
レティ提督の指示が飛ぶ。
丁度そこへ、ティアナが病院から帰ってきた。
「良かったなあティアナ、シャマルが担当で」
そう、あれから病院に直行したティアナは、すぐにシャマル先生に見て貰えたのだ。
流石にシャマルである、彼女の治療魔法は骨折程度なら1時間ほどで直してしまう。
彼女はあっという間に回復していたのだ。
「これは、この化け物は一体?」
「これか?ラルゴのおこぼれや」
「おこぼれって?どうやったらこの化け物を捕まえる事が出来るんですか?」
「ラルゴが倒し損ねた1体を、リィンが凍らせて捕獲したんや、
ラルゴは12体ほど倒してどこかへ消えた、残りは私たちが倒したけどな、
たった1体に手こずっているあんたとラルゴとでは、そこまで大きな差があるって事や」
「そんな……」
確かにそれは大きな差だった。
どんなに努力しても埋めようのない大きな差、それは相手の弱点を見抜く能力、
一体どうしたらそんな力が身に付くのだろう?
これが、経験値の差という物なのだろうか?とティアナは思い知らされた。
「じゃあ、私はこれからこいつを作った連中の所にガサ入れしてくる、フェイトちゃんも一緒や、
ティアナはその間書類を頼むわ」
フェイトが指揮を執って行われたガサ入れは、八神家、クロノ提督とその部下数名を加えてかなり厳しく行われた。
こうして、E&Mバイオテック社の悪事は白日の下に晒された。
この会社で製造された人間兵器が、まだ紛争を続けている世界に売りさばかれていたのだ。
一方、裏社会では、不死身の化け物さえ倒す無敵の殺し屋としてラルゴの名前がまた大きくなっていた。
ラルゴ15、本名ヴァイス=グランセニック、ミッドチルダの闇に生きる孤高の狙撃手、最強の暗殺者である。
彼はどんな難しい依頼でも完遂する、己の銃の腕に賭けて。
ラルゴ15 完
作品名:必殺仕事人 in ヴォルケンリッター 特別読切 作家名:酔仙