はいいろのゆび
アーサーについて行くと昨日の部屋に通された。
相変わらずアンティークで統一されたこの空間は、なんとなく落ち着かない。
「あの~お庭に行くのでは?」
「あぁ、そうだ。こっちに来い。」
アーサーは菊に手を差し伸べた。菊は意味が分からず、アーサーに近づく。
すると、アーサーはしっかりと菊の手をとり入り口からは死角にある部屋へ移動した。
室内は薄暗く、ほとんどは菊の読めない言語で書かれた本がたくさんあった。
部屋の中央まで行くとアーサーは立ち止まり目を閉じた。
「我が精霊よ、我らを導き給へ!」
パァッと床が明るくなり、眩しくて目を閉じる。
身体はこわばり無意識にアーサーの手をぎゅうっと握る。
「菊、目を開けろ。」
アーサーの声に恐る恐る目を開けると、一面緑に包まれた明るい景色が目には映った。
次の瞬間、視界は真っ白に染まった。
「ありがとう、ユニコーン」
目の前にはあの時、石庭で見た眩いばかりに光を反射するユニコーンがいた。
アーサーが頭についた鋭い角をなでると、ユニコーンは鼻を鳴らしアーサーに顔を
すりつけた。
「あははは、くすぐったいって。俺もお前に会えて嬉しいよ。
今日は客人を連れて来たんだ。」
そう言って、アーサーは菊に近づく。
「菊だ。今日からここの庭の世話をしてくれる。」
ユニコーンは菊に近づき足元から頭まで嗅ぐと、身体をすりつけ始めた。
「よし、大丈夫だな。まあ菊なら問題ないと思ってはいたが。」
「え?何がですか?」
「ここは、俺たちが生活している世界とは違う空間だ。精霊の世界との狭間にあるから、
狭間の大地と呼ばれている。ここに来るには精霊の力が必要なんだが、
誰でもいいってわけじゃない。精霊に気に入られないと入って来れないんだ。
特に俺のユニコーンは、審査が厳しくて少し心配していたんだが良かった。」
「そんな、私、能力者でもないのに…むしろ逆の力…排除すべき存在なのでは?」
「いや、能力者かどうかは関係ない。フランシスはユニコーンに許してもらうのに
3年かかったからな。」
「そうですか。しかし…」
「ユニコーンがお前を信用したんだ。だから、お前もユニコーンを信用してやれ。」