はいいろのゆび
Episode 6
薔薇園は広かった。
一回り案内してもらったが、とてもこれだけでは覚えられそうにない。
アーサーは後で、地図を渡してくれると言ってくれたので迷うことはなさそうだ。
どうやら、計算されて花は植えられているらしく、どの季節でも楽しめるように
なっているらしい。
ユニコーンは、アーサーのすぐ側に引っ付いて歩いていて、何度も身体を擦り寄せていた。
「本当にアーサーさんのことがお好きなんですね。」
「あぁ。小さい頃からの付き合いだからな。俺もこいつには何でも話してきたし…。」
自分にとっての愛犬のようなものだろうか。
菊はあの何ともいえないもふもふな毛を思い出した。
「菊。」
アーサーの声に菊は自分のトリップしていた頭を戻し、ピクリとする。
「これを付けとけ。」
アーサーが差し出したのは、銀色のブレスレットだった。
中心に1つ赤い薔薇の蕾がついていて、それ以外には何もないシンプルなものだ。
「こんな綺麗なものを私に?」
「これからお前は俺専属の庭師として、ここに来なきゃいけないだろう?
だが、ユニコーンはお前の精霊でもなければ、お前は能力者でもない。
そんな奴がここに来るためには、精霊のマスターである俺と接触したまま一緒に
来るしかないんだ。だが、そのブレスレッドがあれば能力者でなくてもここに来ることが
出来る。もちろん、誰でもというわけじゃない。ユニコーンの信頼を得なければならない
んだ。このブレスレッドは精霊、つまりユニコーンと繋がっている。持ち主の声によって
ユニコーンがお前をここまで導いてくれるんだ。」