はいいろのゆび
菊はもう一度ブレスレッドをよく見た。
曇りのない銀色は光を反射して品がいい。そこに鎮座する蕾は一枚一枚の花弁が
丁寧に合わさって繊細なつくりをしている。それは、角度によって光彩が鮮やかに
変化し、見る者の心を奪う。
「つけてみろ。」
菊は言われるがままにその銀輪を左手首につけた。
瞬間、淡い光を放ち菊は目を見開いた。
ブレスレットにあったわずかな隙間がなくなり、菊の手首にぴったりとはまった。
蕾だった薔薇はゆっくりと開き、横から蔓が伸びると銀色のバングルに絡みつき一周した。
「あ、あれ?」
そっと触れてみると、そのブレスレットはピクリとも動かなかった。
「これでお前はいつでもここに来ることが出来る。」
「これ、今、形が変わったのですが…」
「あぁ、それはユニコーンの信頼の証だ。ブレスレットは、精霊のマスターが死ぬまで
お前の手首から外れることはない。つまり、俺が生きている限りお前はいつでも精霊の
導きを得られるんだ。」
「なるほど。ありがとうございます。アーサーさん、ユニコーンさん。」
菊はアーサーに微笑み、ユニコーンのたてがみ撫でた。
ユニコーンは金色(こんじき)の目を細め、菊の頬に自分の顔を擦り寄せた。