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はいいろのゆび

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Episode 7



アーサーが渡したブレスレットは期待通り菊を持ち主として認め、その左手首に納まった。

表情の変化のない奴だと思っていたが、『ありがとうございます』と言った時の微笑みは
可憐で、菊自体が精霊なんじゃないかと思った。
不規則な鼓動は段々と大きくなり、アーサーはそれを振り払うように菊の手を掴み
ユニコーンに別れを言った。
『菊のこと、頼んだぞ』なんて、らしくない言葉を残してアーサーは薄暗い蔵書室へと戻る。

移動の間(といってもそんなに長くはないが)、繋いだ手から伝わる熱が、
アーサーの鼓動を更に速めた。
人との接触があまりないからかと思ったが、まだ“緑の指”が使いこなせないくらい
小さい頃、フランシスが自分と手をつないで彼の精霊の元まで連れて行ってくれたことが
ある。フランシスはただ自分の弟分に自慢したかっただけだろうが、幼いながらもそれを
楽しみにしていたのを覚えている。(そんなこと絶対本人には言わないが)
その時はこんな気持ちにはならなかった。
意識すればするほどその感覚が顕著になり顔に熱が集まる。
それがバレないようアーサーは部屋に着くなり菊の手をすぐに離し仕事部屋に向かった。
アーサーがその原因を知るのはもう少し後のこと。






菊がHGFに着てから一週間が経った。
初めて会った時はその闇に溶け込むような黒い髪と瞳に吸い込まれそうで、
何を考えてるか分からず戸惑ったが、話しかければちゃんと応えるし、ほんの少し口角を
上げた愛想笑いは親しみやすい。さらに気が利くということから菊がHGFの奴らと
打ち解けるのに時間はかからなかった。それと、食に対するこだわりが強い。
フランシスとはその点で特に話が合っているようだ。

本部から育成学校へは、HGFの証明書があれば自由に出入りできる。
逆はさすがに自由にとはいかないが書類に理由と必要事項を記載すれば可能だ。

あれから菊は、暇さえあれば学校の図書館に通っているようだ。
今日は雑務も書類仕事もあまりなかったから、昼から暇をやっていた。
まだ図書館にいるという可能性は低いが、もうすぐ夕食の時間だし様子を見に行って
みることにした。



作品名:はいいろのゆび 作家名:Sajyun